ソーテルヌとは、フランス・ボルドー地方の南部にある、貴腐ワインで世界的に知られる産地の名前であり、そこで造られる甘口白ワインの名称です。セミヨンを主体にした貴腐ブドウから造られ、はちみつやアプリコットのような香りととろりとした甘さが特徴です。チョコレート菓子「レザン・ドレ・オ・ソーテルヌ」は、このワインに漬けたレーズンを使ったお菓子です。
ソーテルヌの場所と気候
ソーテルヌはボルドー市の南東、ガロンヌ川の左岸に位置します。この一帯では、ガロンヌ川に支流のシロン川が流れ込んでいます。シロン川は森の中を流れてくるため水温が低く、ガロンヌ川との温度差によって秋の朝に霧が立ちこめやすいのが特徴です。
朝の霧で湿ったブドウに貴腐菌(ボトリティス・シネレア)が広がり、日中の日差しと乾いた風で果実の水分が抜けていく。この繰り返しによって糖分の凝縮した貴腐ブドウが生まれます。こうした条件がそろう土地は世界でも限られており、ソーテルヌが貴腐ワインの代表的な産地になった理由です。貴腐の仕組みについては貴腐ワインの記事で詳しく紹介しています。
ソーテルヌを名乗れる村
ソーテルヌの名前で造られる甘口ワインの産地は、ソーテルヌ、バルサック、ボンム、ファルグ、プレニャックの5つの村にまたがります。このうちバルサック村のワインは、「バルサック」の名前でも「ソーテルヌ」の名前でも出荷できます。
周辺の甘口ワイン産地
ガロンヌ川をはさんだ対岸の右岸にも、ルーピアック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モンといった甘口白ワインの産地があります。ソーテルヌと同じように貴腐ブドウや遅摘みのブドウを使い、セミヨンを中心に造られています。ソーテルヌに比べると軽やかで、手に取りやすいものが多いのが特徴です。ソーテルヌの雰囲気を気軽に味わいたいときの選択肢として覚えておくと便利です。
使われるブドウと造り方
ソーテルヌに使われる主な品種は次の3つです。
- セミヨン:主体となる品種。果皮が薄く貴腐菌がつきやすく、まろやかな厚みとはちみつのような風味をもたらします
- ソーヴィニヨン・ブラン:爽やかな酸と香りを加え、甘さを引き締めます
- ミュスカデル:少量ブレンドされることがあり、華やかな香りを添えます
収穫は、貴腐が理想的に進んだ粒や房を選びながら、同じ畑を何度も回って手で摘み取ります。搾った果汁は糖度がとても高いため、発酵はゆっくりと進み、糖分を食べきる前に発酵が止まる、あるいは造り手が冷却などで止めることで、たっぷりの糖分が残ります。その後、樽で熟成させるのが一般的で、樽由来のバニラやトーストの香りが甘さに奥行きを加えます。
天候に恵まれない年は貴腐ブドウが十分にできず、生産量が大きく減ったり、トップクラスの造り手がその年の出荷を見送ったりすることもあります。
格付けと代表的なシャトー
ソーテルヌとバルサックの甘口ワインは、1855年のパリ万国博覧会に合わせて作られたボルドーの格付けの対象になっており、メドックの赤ワインと並んで評価されました。この格付けでは、シャトー・ディケムだけが「プルミエ・クリュ・シュペリュール(特別第1級)」という特別な地位に置かれ、その下に1級、2級が続きます。
| 格付け | シャトーの例 |
|---|---|
| 特別第1級 | シャトー・ディケム |
| 第1級 | シャトー・スデュイロー、シャトー・リューセック、シャトー・ギロー、シャトー・クリマン(バルサック)、シャトー・クーテ(バルサック)など |
シャトー・ディケムについてはシャトー・ディケムの記事でくわしく紹介しています。ボルドー全体の格付けや産地の分け方はボルドーワインの記事を参照してください。
ソーテルヌの味わいと楽しみ方
若いソーテルヌは明るい黄金色で、アプリコット、黄桃、パイナップル、柑橘の皮、はちみつのような香りがします。熟成が進むと色は琥珀色に深まり、マーマレード、カラメル、サフラン、ナッツのような香りが重なっていきます。甘さが強いだけでなく酸も備えているため、長い熟成に耐えるワインとして知られています。
飲むときは8〜12℃前後に冷やし、少量ずつ味わうのがおすすめです。合わせる料理としては、ロックフォールなどの青カビチーズ、フォアグラ、フルーツを使ったタルトやクレーム・ブリュレがよく挙げられます。フランスでは、食前酒として冷やしたソーテルヌを楽しむこともあります。
ソーテルヌの多くは375mlのハーフボトルでも売られているので、少しずつ試したいときに便利です。甘口ワイン全般の種類はデザートワインの記事にまとめています。
開栓後のソーテルヌは、糖分と酸が多いため比較的日持ちしやすく、栓をして冷蔵庫に入れておけば数日から1週間ほど楽しめるものが多いです。グラス1杯でも満足感があるので、少しずつ味わうのに向いています。
レザン・ドレ・オ・ソーテルヌとは
「ソーテルヌ」という言葉は、ワインだけでなくお菓子の名前でも目にすることがあります。代表的なのが、フランス南西部のポーにあるヴェルディエ社のチョコレート菓子「レザン・ドレ・オ・ソーテルヌ“貴腐”」です。ソーテルヌに漬け込んだドライレーズンを、ビターなチョコレートでコーティングしたもので、日本でも輸入され、ワインに合うチョコレートとして贈り物にも選ばれています。「レザン・ド・レオ」と聞き間違えられることもありますが、「レザン・ドレ(黄金色のレーズン)」と「オ・ソーテルヌ(ソーテルヌ風味の)」を合わせた名前です。
お菓子にはアルコール分が残っている場合があるので、お子さまやアルコールに弱い方が食べる前には、商品の表示を確認してください。
まとめ
ソーテルヌは、ボルドー南部の霧が生まれやすい土地で、貴腐ブドウから甘口白ワインを造る産地です。セミヨンを主体に、手間のかかる手摘みと樽熟成を経て、はちみつのような香りと酸を備えた長熟のワインが生まれます。1855年の格付けではシャトー・ディケムが特別な地位を与えられました。ワインとしてだけでなく、ソーテルヌに漬けたレーズンのチョコレートなど、お菓子を通してその香りに触れるのもひとつの楽しみ方です。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



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