シャトー・ディケム(Château d’Yquem)とは、フランス・ボルドー地方のソーテルヌ地区で造られる、貴腐ブドウの甘口白ワインです。1855年の格付けでは、ソーテルヌでただひとつ「特別第1級(プルミエ・クリュ・シュペリウール)」という別格の等級を与えられました。とろりとした甘さと鮮やかな酸、何十年も熟成する力を持ち、世界の甘口ワインの頂点とされる存在です。
シャトー・ディケムの基本
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | フランス・ボルドー、ソーテルヌ地区 |
| 格付け | 1855年格付け 特別第1級(ソーテルヌで唯一) |
| 畑の面積 | 約113ヘクタール(実際に収穫に使うのは常時約100ヘクタール) |
| 品種 | セミヨン主体に、ソーヴィニヨン・ブラン |
| タイプ | 貴腐ブドウによる甘口白ワイン |
| 所有 | LVMHグループ(1999年から) |
ソーテルヌという産地や貴腐ワインのしくみについては、ソーテルヌの記事や貴腐ワインの記事で詳しく紹介しています。
貴腐ブドウと手間のかかる収穫
ディケムの甘さは、砂糖を加えたものではなく、「貴腐」と呼ばれる現象から生まれます。秋のソーテルヌでは、近くを流れる川がもたらす朝霧と、昼の晴天が繰り返されます。この条件のもとで、ボトリティス・シネレアというカビがブドウの皮について、果実の水分が抜け、糖分や酸、香りが凝縮されていきます。
貴腐の進み方は房ごと、粒ごとにばらばらです。そのためディケムでは、畑を何度も回って、ちょうどよく貴腐化した房や粒だけを手で摘み取っていきます。こうして集めた果実は水分が少ないため、1本の木から取れるワインはごくわずかで、「ブドウの木1本からグラス1杯ほど」とたとえられることもあります。
造らない年もある
ディケムは、天候に恵まれず納得のいく品質に達しない年には、その年のワインをディケムとして出しません。これまでに、1910年、1915年、1930年、1951年、1952年、1964年、1972年、1974年、1992年、2012年の各ヴィンテージで、ディケムの生産を見送っています。
貴腐ワインは、秋の天気に大きく左右されます。雨が続けばブドウが傷み、霧が出なければ貴腐が進みません。こうした年に生産をあきらめるという判断は、品質を何より重んじるディケムの姿勢をよく表しています。
ディケムの歴史
ディケムの名前は、この土地を持っていたソヴァージュ・ディケム家に由来します。1785年、この家のフランソワーズ・ジョゼフィーヌがリュル・サリュース伯爵と結婚したことで、シャトーはリュル・サリュース家のものとなりました。それから200年以上にわたって、ディケムはこの一族のもとで受け継がれます。
1855年の格付けでは、甘口ワインの部門で、ほかのシャトーより上の「特別第1級」に位置づけられました。この等級を持つのは、現在もディケムだけです。1999年には、高級ブランドを多く抱えるLVMHグループが経営権を握り、現在に至っています。
ディケムの味わいと「イグレック」
ディケムは、黄金色の甘口ワインで、熟成とともに琥珀色へと深まっていきます。アプリコットやパイナップル、はちみつ、オレンジピール、バニラ、サフランなどにたとえられる香りがあり、濃厚な甘さを鮮やかな酸が支えているため、重たすぎない後味が特徴です。数十年、場合によってはそれ以上の熟成に耐えると言われます。
ディケムでは、甘口のほかに、辛口の白ワインも造っています。「Y」と書いて「イグレック」と読むこのワインは、1959年が最初のヴィンテージで、限られた年だけに造られてきました。甘口のディケムとは違う、香り豊かでふくよかな辛口白として知られています。
| ワイン | タイプ | 特徴 |
|---|---|---|
| シャトー・ディケム | 甘口白 | 貴腐ブドウから。長期熟成型 |
| イグレック(Y) | 辛口白 | 1959年が初ヴィンテージ。造られる年が限られる |
楽しみ方と合わせ方
ディケムは、10℃前後を目安にやや冷やして飲むのが一般的です。冷やしすぎると香りが閉じてしまうので、冷蔵庫から出して少し置いてから注ぐとよいでしょう。小ぶりなグラスに少量ずつ注ぎ、香りの変化をゆっくり楽しむのがおすすめです。
合わせる料理としては、次のような組み合わせがよく知られています。
- フォアグラのテリーヌやソテー
- ロックフォールなどの青カビチーズ
- アプリコットや桃、洋梨を使ったタルト
- 甘さを控えたナッツやドライフルーツ
甘口ワインは開けてからも比較的ゆっくり変化するので、栓をして冷蔵庫に入れ、数日かけて楽しむこともできます。ハーフボトルで売られていることもあるので、少人数で味わいたいときに便利です。甘口ワインの全体像はデザートワインの記事もどうぞ。
まとめ
シャトー・ディケムは、ソーテルヌ地区で造られる貴腐ワインで、1855年格付けで唯一の「特別第1級」に選ばれたシャトーです。貴腐化した粒を何度も選んで摘む手間のかかる造りを守り、品質に満たない年は生産を見送ってきました。1785年からリュル・サリュース家、1999年からはLVMHのもとにあり、辛口の「イグレック」も造っています。特別な日の食後に、ゆっくり味わいたいワインです。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



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