ミュスカデとは、フランス・ロワール地方の河口近く、ナント周辺で造られる辛口の白ワインです。原料は「ムロン・ド・ブルゴーニュ」というブドウで、レモンや青りんごのような爽やかな香りと、すっきりした酸、ほのかな塩気を感じさせるミネラル感が特徴。牡蠣をはじめとする魚介類と相性のよい白ワインとして知られています。
ミュスカデは産地の名前?品種の名前?
ミュスカデ(Muscadet)は、ワインの名前(原産地呼称)であり、その原料のブドウを指す呼び名としても使われてきました。ブドウの正式な品種名は「ムロン・ド・ブルゴーニュ(Melon de Bourgogne)」です。名前のとおりブルゴーニュから伝わったとされる品種ですが、いまではブルゴーニュではほとんど見られず、ロワール河口のこの地域でほぼ専用に使われています。
なお、名前が似ている「マスカット(ミュスカ)」とは関係のない品種です。マスカット系のブドウは甘く華やかな香りが特徴ですが、ムロン・ド・ブルゴーニュは香りが控えめで、すっきりとした中立的な味わいです。マスカット系のワインについてはモスカートの記事で紹介しています。
ミュスカデの歴史
ミュスカデの産地、ペイ・ナンテ(ナント地方)は、大西洋に近く、ロワール川を通じて海とつながる交易の地でした。1709年、ヨーロッパを襲った厳しい寒波でこの地域のブドウ畑は大きな被害を受け、その後、寒さに強いムロン・ド・ブルゴーニュが多く植えられるようになったといわれます。
当時、フランスのワイン交易で大きな力を持っていたのがオランダの商人たちでした。オランダ商人はこの地域の白ワインを買い付け、蒸留してブランデーにするなど、北ヨーロッパへの輸出を担っていました。こうした需要も、すっきりとした白ワインを大量に造るムロン・ド・ブルゴーニュが広まる後押しになったと考えられています。
4つのアペラシオン
ミュスカデには、産地の範囲によって4つのアペラシオン(原産地呼称)があります。
| アペラシオン | 特徴 |
|---|---|
| ミュスカデ | 地域全体をカバーする基本の呼称 |
| ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ | セーヴル川とメーヌ川の流域。生産量の大部分を占める中心地 |
| ミュスカデ・コトー・ド・ラ・ロワール | ロワール川の上流側、アンジュー寄りの地区 |
| ミュスカデ・コート・ド・グランリュー | グランリュー湖の周辺。比較的新しい呼称 |
さらに近年は、特定の村や土壌ごとに区画を定めた「クリュ・コミュノー」も認められています。最初に認定されたのはクリソン、ゴルジュ、ル・パレの3つで、その後も追加されています。クリュ・コミュノーは、収量を抑え、澱とともに長期間熟成させるのが特徴で、ミュスカデの中でも凝縮感があり、熟成にも耐える上級のワインです。
「シュール・リー」とは
ミュスカデのラベルでよく見かけるのが「シュール・リー(Sur Lie)」という言葉です。フランス語で「澱の上で」という意味で、発酵を終えたワインを、すぐに澱(酵母のかすなど)から引き離さず、冬のあいだ澱と一緒に寝かせておく造り方を指します。
澱とともに寝かせることで、ワインに旨みとふくらみが加わり、パンのような香ばしい香りや、かすかなガスによるいきいきとした口当たりが生まれます。香りが控えめなムロン・ド・ブルゴーニュに、厚みと複雑さを与える工夫といえます。シュール・リーと表示するには、収穫翌年の春以降の決められた期間に、造られた醸造所で瓶詰めすることなどの条件があります。
この技法は日本ワインにも取り入れられていて、甲州のワイン造りで広く使われています。詳しくは甲州ワインの記事で紹介しています。
味わいと合う料理
ミュスカデは、すっきりとした辛口で、アルコール度数も控えめなものが多く、軽やかに飲める白ワインです。
- 香り: レモン、青りんご、洋梨、白い花、潮風を思わせるミネラル感
- 味わい: 軽やかでシャープな辛口。シュール・リーのものは旨みとふくらみがある
- 酸: しっかり
大西洋に面した産地らしく、魚介類との相性は抜群です。とくに生牡蠣との組み合わせは、フランスでも定番として知られています。
- 生牡蠣、カキフライ
- あさりの酒蒸し、ボンゴレ・ビアンコ
- 白身魚のカルパッチョ、マリネ
- エビやホタテのグリル
- 寿司、刺身、天ぷら
あさりを使う料理なら、下ごしらえはあさりの塩抜きを参考にしてください。魚介のパスタやアクアパッツァとも合わせやすいワインです。
飲み方と選び方
ミュスカデは、8〜10度くらいによく冷やして飲むのがおすすめです。軽やかなスタイルのものは若いうちの爽やかさを楽しむのが基本ですが、クリュ・コミュノーや上質な造り手のものは、数年から10年ほど熟成させて、まろやかさや複雑さの変化を楽しむこともできます。
選ぶときは、まずセーヴル・エ・メーヌとシュール・リーの表示を目安にすると、旨みのあるバランスのよいミュスカデに出会いやすいでしょう。より本格的な味わいを知りたいなら、クリュ・コミュノーの村名が書かれたものを探してみてください。比較的手ごろな価格のものが多く、普段の魚料理に合わせる白ワインとしても取り入れやすい一本です。白ワイン全般は白ワインの記事にまとめています。
まとめ
ミュスカデは、ロワール河口のナント周辺で、ムロン・ド・ブルゴーニュから造られる辛口の白ワインです。マスカットとは関係がなく、香りは控えめで、すっきりとした酸とミネラル感が持ち味。澱とともに寝かせるシュール・リーによって旨みとふくらみが加わります。生牡蠣をはじめとする魚介料理と合わせると、その魅力がいちばんよくわかります。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



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