ジャック・セロス(Jacques Selosse)とは、シャンパーニュ地方コート・デ・ブランのグラン・クリュ、アヴィズ村に拠点を置く家族経営のシャンパン生産者です。自分の畑のぶどうで自らシャンパンを造る「レコルタン・マニピュラン(RM)」の代表格で、2代目のアンセルム・セロスの考え方は、のちのシャンパーニュの小さな造り手たちに大きな影響を与えました。
ジャック・セロスの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 拠点 | アヴィズ村(コート・デ・ブラン、グラン・クリュ) |
| 創業 | 1949年、ジャック・セロスによる |
| 2代目 | アンセルム・セロス(1974年から) |
| 現在の当主 | ギヨーム・セロス(2018年から) |
| 生産者の区分 | レコルタン・マニピュラン(自社畑のぶどうで自ら醸造) |
| 主なぶどう | シャルドネが中心。ピノ・ノワールのキュヴェもある |
大手メゾンと「つくり手シャンパン」
シャンパーニュでは長いあいだ、大手メゾンが多くの農家からぶどうを買い集め、ブレンドして毎年同じ味を造るやり方が主流でした。畑を持つ農家の多くは、ぶどうをメゾンに売るのが一般的だったのです。
これに対して、自分の畑のぶどうで自らシャンパンを仕込み、自分の名前で売る生産者は「レコルタン・マニピュラン」と呼ばれます。日本では「グロワー・シャンパーニュ」「生産者のシャンパン」と紹介されることもあります。ジャック・セロスは、この小さな造り手のシャンパンが世界的に注目されるきっかけを作った存在として語られます。
シャンパンの成り立ちやメゾンの仕組みは、シャンパンの基本の記事で紹介しています。
アンセルム・セロスの考え方
ドメーヌは1949年にジャック・セロスがアヴィズで始めました。1974年に息子のアンセルムが引き継ぐと、そのやり方は大きく変わります。アンセルムはブルゴーニュでワイン造りを学んだ経験から、シャンパンも「ワイン」として、畑の個性を映すものにしようと考えました。よく知られる特徴は次のとおりです。
- 畑の仕事を重視し、化学的なものにできるだけ頼らない栽培を目指す
- ベースワインを樽で発酵・熟成させる
- ぶどうに付いている自然の酵母を生かす
- ドサージュ(瓶詰め前に加える糖分)を控えめにする
- 空気にゆっくり触れさせる熟成で、複雑な香りを引き出す
こうして生まれるシャンパンは、一般的なシャンパンに比べて香りが濃く、ナッツやスパイス、熟した果実のような風味をもつ個性的なものです。爽やかさを期待して飲むと驚くほどで、好みがはっきり分かれる味わいともいえます。
2018年からは息子のギヨーム・セロスが当主となり、父の考え方を受け継ぎながら造りを続けています。アヴィズの村ではホテル兼レストランの「レ・ザヴィゼ」も営んでいます。
主なキュヴェ
ジャック・セロスのシャンパンは種類が多く、どれも生産量はわずかです。代表的なものを挙げます。
| キュヴェ | 特徴 |
|---|---|
| イニシャル | 複数年のシャルドネをブレンドしたブラン・ド・ブラン。セロスの入口とされる一本 |
| V.O.(ヴェルシオン・オリジナル) | ドサージュをほとんど加えない辛口のブラン・ド・ブラン |
| シュブスタンス | 1986年に始めたソレラ方式で、毎年ワインを継ぎ足して造るブラン・ド・ブラン |
| リュー・ディ(6種) | 村ごとの区画を表現するシリーズ。シャルドネとピノ・ノワールの区画がある |
| ミレジム | 良い年だけに造るヴィンテージ |
ソレラで造るシュブスタンス
なかでも有名なのがシュブスタンスです。ソレラとは、スペインのシェリー造りで使われる方法で、熟成中のワインを毎年一部だけ取り出し、そのぶん新しいワインを継ぎ足していきます。こうすることで、1986年以来の多くの年のワインが少しずつ混ざり合った、年をまたいだ深みが生まれます。シェリーの熟成方法はペドロ・ヒメネスの記事でも触れています。
リュー・ディ・シリーズ
「リュー・ディ」は、畑の中で名前の付いた小さな区画のことです。セロスはアヴィズ以外の村も含めた6つの区画から、それぞれ1つずつシャンパンを造っています。区画ごとに土や向きが違えば味も違う、というブルゴーニュ的な考え方をシャンパーニュに持ち込んだシリーズです。
味わいと楽しみ方
ジャック・セロスのシャンパンは、香りが豊かで、口当たりに厚みがあります。キンキンに冷やすと香りが閉じてしまうため、白ワインと同じくらいのやや高めの温度で、ふくらみのあるワイングラスで飲むのがよいとされます。開けてから時間とともに香りが変わっていくのも楽しみの一つです。
料理は、ナッツやキノコ、熟成したチーズ、鶏や仔牛のクリーム煮、バターを使った魚料理など、旨みのあるものと合わせやすいでしょう。グラスの選び方はワイングラスの記事で紹介しています。
生産量が少なく人気も高いため、流通量は限られ、価格も高めです。高級シャンパンの全体像は高級シャンパンの記事にまとめています。
まとめ
ジャック・セロスは、アヴィズ村の家族経営のシャンパン生産者です。2代目のアンセルム・セロスが、樽での醸造や自然酵母、控えめなドサージュなど、シャンパンを畑の個性を映すワインとして造る考え方を広め、多くの小さな造り手に影響を与えました。ソレラで造るシュブスタンスや区画ごとのリュー・ディ・シリーズなど、個性の強いキュヴェがそろいます。冷やしすぎず、ワインのように香りの変化を楽しむのがおすすめです。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



コメント