岩の原ワイン(岩の原葡萄園)とは?川上善兵衛とマスカット・ベーリーA

岩の原ワイン(岩の原葡萄園)とは?川上善兵衛とマスカット・ベーリーA 食文化

岩の原ワインとは、新潟県上越市にあるワイナリー「岩の原葡萄園(いわのはらぶどうえん)」が造るワインのことです。岩の原葡萄園は、「日本のワインぶどうの父」と呼ばれる川上善兵衛(かわかみ ぜんべえ)が1890年(明治23年)に開きました。日本を代表する赤ワイン用品種「マスカット・ベーリーA」は、この川上善兵衛が生み出したブドウです。

川上善兵衛と岩の原葡萄園のはじまり

川上善兵衛は、1868年に現在の上越市北方に生まれました。7歳で家の当主となり、若いころには慶應義塾でも学んでいます。雪深い農村の暮らしを豊かにしたいと考えた善兵衛は、1890年、自宅の庭園をつぶしてブドウ畑を拓き、「岩の原葡萄園」と名づけてブドウ栽培とワイン造りを始めました。

しかし、ヨーロッパやアメリカから取り寄せたブドウは、湿気が多く雪の深い日本の気候ではうまく育たないものも多くありました。そこで善兵衛は、日本の風土に合うワイン用のブドウを自ら生み出そうと、品種の交配に取り組みます。

マスカット・ベーリーAなど「川上品種」の誕生

善兵衛は、生涯で1万回を超える交配を重ね、その中から優良な22品種を世に送り出しました。代表的なのが次の品種です。

品種 色 特徴
マスカット・ベーリーA 黒ブドウ 1927年にベーリーとマスカット・ハンブルグを交配。いちごのような甘い香りと、やわらかな渋み
ブラック・クイーン 黒ブドウ 岩の原葡萄園の畑でもいまも育てられている
ローズ・シオター 白ブドウ 岩の原葡萄園ではスパークリングワインや白ワインに使われる
レッド・ミルレンニューム 白ブドウ 川上善兵衛が生んだ白ブドウのひとつ

マスカット・ベーリーAは1940年に発表され、いまでは日本で最も多く栽培されている赤ワイン用品種のひとつとなりました。2013年には、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)にワイン用の品種として登録されています。善兵衛は1941年、品種の育成に関する研究で日本農学賞を受賞し、1944年に亡くなりました。日本の品種全体については日本ワインとはもどうぞ。

石蔵と雪室

岩の原葡萄園には、明治時代に建てられた石造りのワイン蔵が残っています。1894年に建てられた第一号石蔵は、現存する日本最古のワイン蔵として国の登録有形文化財になっています。

また、善兵衛は、冬に積もった雪を蔵に蓄えておき、その冷気を使ってワインを低い温度で発酵させる「雪室(ゆきむろ)」を取り入れました。冷蔵の設備がない時代に、雪国ならではの知恵でワイン造りの課題を乗り越えた、画期的な工夫でした。雪室は2005年に再建され、いまも敷地内でワイン造りの歴史を伝えています。

サントリーとの関係

ブドウ栽培とワイン造りには多くの資金がかかり、岩の原葡萄園の経営は苦しい時期もありました。そこで善兵衛を支えたのが、サントリーの前身である寿屋の創業者・鳥井信治郎です。こうした縁から、岩の原葡萄園は現在もサントリーのグループ会社として運営されています。

岩の原ワインの特徴と代表的なワイン

岩の原葡萄園では、川上善兵衛が生み出した品種を中心に、上越の畑で育てたブドウでワインを造っています。棚仕立ての畑が中心で、冬の間は積もった雪がブドウの木を寒さから守ってくれるといいます。

  • 善兵衛プレミアムシリーズ:創業者の名を冠した上級シリーズ。
  • 深雪花(みゆきばな):岩の原葡萄園の顔ともいえるシリーズ。赤は完熟したマスカット・ベーリーAで造られています。
  • ローズ・シオターのスパークリングワイン:自社畑のローズ・シオターを使った泡のワイン。

マスカット・ベーリーAの赤ワインは、渋みがやわらかく果実の香りが豊かなので、照り焼きや肉じゃが、すき焼きなど甘辛い家庭料理と合わせやすいワインです。少し冷やして飲むと、香りが生き生きと感じられます(ワインの適温)。料理との合わせ方はワインのマリアージュにまとめています。

ワイナリーには、ワインショップやレストラン、資料室を備えた「川上善兵衛記念館」があります。見学や営業の内容は変わることがあるので、訪れる前に公式情報を確かめてください。

岩の原葡萄園は、上越市の中心部から車で向かう場所にあります。冬は雪が深く積もる地域なので、冬に訪れる場合は道路の状況を事前に確かめておくと安心です。

まとめ

岩の原ワインは、川上善兵衛が1890年に新潟県上越市で開いた岩の原葡萄園のワインです。善兵衛は1万回を超える交配からマスカット・ベーリーAなど22品種を生み出し、雪室や石蔵を使った雪国ならではのワイン造りの道を拓きました。日本のワイン用ブドウのふるさとともいえる場所で造られるワインを、ぜひ一度味わってみてください。日本のワイン造りの歩みは日本ワインの歴史もどうぞ。

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

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