安心院ワインとは?大分・安心院葡萄酒工房の歴史と代表的なワイン

安心院ワインとは?大分・安心院葡萄酒工房の歴史と代表的なワイン 食文化

安心院(あじむ)ワインとは、大分県宇佐市安心院町にある「安心院葡萄酒工房」で造られるワインのことです。焼酎「いいちこ」で知られる三和酒類が営む醸造所で、地元のぶどうにこだわったワイン造りを続けています。なかでもシャルドネを瓶内二次発酵させた「安心院スパークリングワイン」は、国内のコンクールで何度も最高評価を受けてきた、九州を代表する日本ワインのひとつです。

安心院はどんな土地?西日本有数のぶどう産地

安心院町は大分県の北部、宇佐市の内陸にある盆地の町です。まわりを山に囲まれ、霧が出やすく、昼と夜の寒暖差が大きいうえに雨が比較的少ないという気候は、ぶどうづくりに向いています。

この地でぶどうの栽培が本格的に始まったのは1960年代です。昭和41年(1966年)には国営の農地開発事業のなかで「西日本一のぶどう団地」を目標に産地づくりが進められ、それから半世紀以上にわたってぶどうの生産が続いてきました。当初はデラウェア、キャンベルアーリー、マスカット・ベーリーAといった生食用の品種が中心で、いまも夏から秋にかけてはぶどう狩りを楽しめる観光地として知られています。

こうした土台があったからこそ、安心院は「ぶどうの町」から「ワインの町」へと歩みを進めることができました。日本ワインの産地全体の流れは日本ワインの記事で紹介しています。

安心院葡萄酒工房の歩み

安心院葡萄酒工房を運営する三和酒類は、大分県宇佐市に本社を置く酒造会社です。焼酎のイメージが強い会社ですが、ワインの製造は1971年に始めていて、歴史は半世紀を超えます。

転機になったのが2001年です。この年、安心院のぶどうを収穫したその場でワインにできるよう、安心院町に醸造所を備えた「安心院葡萄酒工房」を開きました。その後、2006年ごろには原料を安心院産のぶどうだけに切り替え、「安心院の土地の個性を表すワイン」という方向をはっきりさせています。

一方で、地元のぶどう農家は高齢化が進み、より高値で売れる巨峰やピオーネなどの生食用品種に切り替える農家も増えていきました。ワイン用のぶどうを安定して確保するため、三和酒類はグループで農業に参入し、2011年から自社農園「あじむの丘農園」でぶどうの栽培を始めています。2013年に最初の収穫を迎え、その後も国の農地再編事業に加わるなどして畑を広げてきました。

年 できごと
1966年 国営の農地開発事業で安心院のぶどう団地づくりが進む
1971年 三和酒類がワインの製造を始める
2001年 安心院町に安心院葡萄酒工房を開く
2006年ごろ 原料を安心院産のぶどうだけに切り替える
2011年 自社農園「あじむの丘農園」で栽培を始める
2013年 自社農園で初めての収穫

看板商品・安心院スパークリングワイン

安心院ワインの名前を広めたのが「安心院スパークリングワイン」です。安心院町で収穫されたシャルドネを100%使い、瓶の中で二次発酵させて泡を生む「瓶内二次発酵」で造られています。シャンパーニュと同じ手間のかかる方法で、国内ではまだ手がける醸造所が多くありません。製法の違いについてはスパークリングワインの記事にまとめています。

このスパークリングワインは、日本ワインコンクール(以前の名前は国産ワインコンクール)のスパークリング部門で、2022年と2024年に金賞・部門最高賞を受けています。部門最高賞は2024年の時点で通算8度目となり、日本のスパークリングワインの代表格といえる存在です。海外でも、2022年のシャンパン&スパークリングワイン・ワールド・チャンピオンシップで銀賞を受けるなど評価を得ています。

白のほかに、赤のスパークリングワインもあり、こちらはジャパン・ワイン・チャレンジ2025で「最優秀日本スパークリングワイン」のトロフィーを受けました。

栽培している品種と主なワイン

安心院葡萄酒工房では、安心院の気候に合うぶどうを探して、ヨーロッパ系の醸造用品種から日本で生まれた品種まで、多くの品種を育てています。公式サイトで紹介されている主な品種は次のとおりです。

  • 白ワイン向け: シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、アルバリーニョ、甲州、ナイアガラ、デラウェア
  • 赤ワイン向け: メルロー、ピノ・ノワール、マスカット・ベーリーA、キャンベルアーリー、小公子、ノートン、ビジュノワール

なかでも力を入れているのがシャルドネです。スパークリングワインの原料になるだけでなく、スティルワインでも「安心院ワイン シャルドネリザーブ」が日本ワインコンクール2024で最上位のグランドゴールド賞を受けています。品種そのものの特徴はシャルドネの記事が参考になります。

スペイン北西部の白ぶどうとして知られるアルバリーニョは、2011年から試験的に栽培を始めた品種です。「安心院ワイン アルバリーニョ 下毛」はジャパン・ワイン・チャレンジ2025で「最優秀白ワイン」のトロフィーを受けました。また、日本の白ぶどうの代表である甲州を使った「安心院ワイン 諸矢 甲州 2021」は、イギリスのデキャンタ・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)2022でプラチナ賞に選ばれています。

赤では、山ぶどうの血を引く日本生まれの品種・小公子も2009年から試験栽培を続けています。シャルドネやメルローといった世界的な品種と、日本の気候に合った品種の両方を試しているのが、安心院葡萄酒工房の特徴です。

安心院葡萄酒工房を訪ねるときに

安心院葡萄酒工房は、大分県宇佐市安心院町下毛にあります。緑に囲まれた敷地のなかに醸造施設や貯蔵庫があり、見学や試飲ができることが紹介されています(運転する人は試飲できないので注意が必要です)。開いている時間や催しの予定は変わることがあるので、出かける前に公式サイトで確かめておくと安心です。

周辺はぶどう園が多く、季節によってはぶどう狩りと合わせて訪ねることもできます。安心院は農家に泊まる「農泊」の取り組みでも知られていて、ぶどうの町の暮らしにふれる旅先として選ぶ人もいます。

安心院ワインの楽しみ方

すっきりとした泡の安心院スパークリングワインは、乾杯の一杯としてはもちろん、食事のはじめから合わせやすいタイプです。大分は関あじ・関さばなどの魚や、とり天、から揚げといった料理で知られる土地なので、地元の味と合わせてみるのも楽しみ方のひとつです。揚げ物の油を泡がさっぱりさせてくれます。

シャルドネリザーブのように樽の風味をまとった白は、クリーム系の料理や鶏肉のソテーなど、少しコクのある料理と合わせやすくなります。アルバリーニョや甲州の白は、魚介や和食との相性を試してみたいワインです。料理との合わせ方の考え方はワインのマリアージュの記事で紹介しています。

まとめ

安心院ワインは、1960年代から続くぶどう産地・大分県宇佐市安心院町で、三和酒類の安心院葡萄酒工房が造るワインです。2001年の工房開設、地元産ぶどうへの切り替え、自社農園の開墾と、土地に根ざしたワイン造りを積み重ねてきました。瓶内二次発酵の安心院スパークリングワインは日本ワインコンクールで何度も部門最高賞を受け、シャルドネ、アルバリーニョ、甲州などのスティルワインも国内外で評価されています。九州の日本ワインを知る入り口として、名前を覚えておきたい産地です。

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

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