モエ シャンパンとは?モエ・エ・シャンドンの歴史と主な銘柄の違い

モエ シャンパンとは?モエ・エ・シャンドンの歴史と主な銘柄の違い シャンパン・スパークリング

モエ・エ・シャンドン(Moët & Chandon)とは、フランス・シャンパーニュ地方のエペルネに本拠を置く、1743年創業のシャンパンメゾンです。「モエ」の愛称で知られ、代表銘柄の「モエ アンペリアル」は世界でもっとも広く知られたシャンパンのひとつです。現在はLVMHグループに属し、高級シャンパンのドン・ペリニヨンも同じグループのブランドです。

モエ・エ・シャンドンとはどんなメゾンか

モエ・エ・シャンドンは、シャンパーニュ地方の中心都市のひとつエペルネに本拠を構える大手のシャンパンハウスです。エペルネには名だたるメゾンが軒を連ねる「アヴニュ・ド・シャンパーニュ(シャンパーニュ大通り)」があり、モエ・エ・シャンドンの本社もこの通りにあります。

規模の大きさはシャンパーニュでも際立っています。自社で所有するぶどう畑はおよそ1,200ヘクタールにのぼり、地域最大級とされます。エペルネの地下には、白亜質の岩盤を掘ってつくられた総延長約28キロメートルのセラー(貯蔵庫)が広がり、瓶内二次発酵を終えたシャンパンが長い熟成の時間を過ごしています。

造りの面では、シャンパーニュの主要3品種であるピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネをブレンドするのが基本です。毎年の収穫の違いを越えて同じ味わいを保つために、過去の年のワイン(リザーブワイン)を組み合わせるノン・ヴィンテージを主力にしつつ、出来のよい年には単一年のヴィンテージも手がけています。シャンパンそのものの定義や造り方についてはシャンパンの記事で詳しく紹介しています。

創業から現在までの歩み

メゾンの始まりは1743年、エペルネのワイン商クロード・モエが「モエ社(Moët et Cie)」を興したことにさかのぼります。当時、シャンパーニュの泡のあるワインはパリの宮廷や上流階級で人気を集めつつあり、クロード・モエは地元のワインを都の顧客へ届けることで商いを広げていきました。

事業を大きく飛躍させたのは、クロードの孫にあたるジャン=レミ・モエです。彼は国外への販路を積極的に開き、ナポレオン・ボナパルトとも親交を結びました。ナポレオンはエペルネのモエ家をたびたび訪れたと伝えられ、ジャン=レミにはレジオン・ドヌール勲章が贈られています。勝利を祝ってサーベルでシャンパンの瓶口を切り落とす「サブラージュ」も、ナポレオンの軍にまつわる逸話として語られることがありますが、これは伝承の域を出ない話です。

1833年、ジャン=レミの娘婿ピエール=ガブリエル・シャンドンが共同経営者に加わったことで、社名は「モエ・エ・シャンドン」となりました。「エ(et)」はフランス語の「and」で、モエ家とシャンドン家の名前を並べたものです。その後、1842年には最初のヴィンテージ・シャンパンを、1869年には現在の看板商品となる「アンペリアル」を世に送り出しています。

20世紀に入ると、メゾンは経営の面でも大きく姿を変えます。1971年にコニャックのヘネシーと合併してモエ・ヘネシーとなり、1987年にはルイ・ヴィトンとの合併によってLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)が誕生しました。世界的な高級ブランドグループの名前の頭に「モエ」が付いているのは、この歴史によるものです。1973年にはアメリカ・カリフォルニア州のナパ・ヴァレーに「ドメーヌ・シャンドン」を設立し、シャンパーニュ以外の土地でのスパークリングワイン造りにも乗り出しました。日本では、LVMHのモエ・ヘネシーとディアジオの合弁会社であるMHD モエ ヘネシー ディアジオが輸入・販売を手がけています。

シャンパーニュ全体の歴史の流れはシャンパンの歴史の記事でまとめています。

ドン・ペリニヨンとの関係

モエ・エ・シャンドンを語るうえで欠かせないのが、プレステージ・シャンパンの代名詞ともいえる「ドン・ペリニヨン」です。名前の由来は、17世紀後半から18世紀初めにかけてオーヴィレール修道院でぶどう畑とワイン造りを任されていた修道士ピエール・ペリニヨンです。シャンパンの「発明者」と紹介されることもありますが、実際にはぶどうのブレンドや品質向上に力を尽くした人物とみるのが一般的で、発明者説は後世に広まった伝説の色合いが濃いとされています。

このオーヴィレール修道院は、現在モエ・エ・シャンドンが所有しています。また「ドン・ペリニヨン」という名前は、もともと別のメゾンであるメルシエが持っていたもので、1927年に両家の縁組をきっかけにモエ側へ譲られました。最初のヴィンテージは1921年で、1936年に初めて発売されています。

つまりドン・ペリニヨンは、モエ・エ・シャンドンが生み出した最上級のキュヴェとして出発しました。現在は独立したブランドとして展開されていますが、同じLVMHのモエ・ヘネシー部門に属する、いわば兄弟のような関係です。ドン・ペリニヨンをはじめとする最上級のシャンパンについては高級シャンパンの記事も参考になります。

主なラインナップ

モエ・エ・シャンドンの銘柄は、名前に「アンペリアル(Impérial=皇帝の)」が付くシリーズが中心です。この名前は、ナポレオン1世とのゆかりにちなんだものとされています。主な銘柄を整理すると次のとおりです。

銘柄 タイプ 特徴
モエ アンペリアル 白・辛口(ブリュット) 1869年誕生の看板銘柄。「ブリュット アンペリアル」と表記されることもある
ロゼ アンペリアル ロゼ・辛口 赤い果実の香りが華やかなロゼ
ネクター アンペリアル 白・やや甘口(ドゥミ・セック) 甘みを残した仕上げで、デザートや食後に向く
ネクター アンペリアル ロゼ ロゼ・やや甘口(ドゥミ・セック) 果実味の豊かな甘めのロゼ
アイス アンペリアル 白(ロゼもあり) 氷を入れたグラスで飲むことを前提に造られたシャンパン
グラン ヴィンテージ 白・ロゼ(ヴィンテージ) 出来のよい単一年のぶどうだけで造る

モエ アンペリアル

モエ・エ・シャンドンのスタイルを最も素直に表した、メゾンの顔ともいえるシャンパンです。100種類を超えるワインをブレンドしてつくられ、その2〜3割を過去の年のリザーブワインが占めます。品種の比率はピノ・ノワールとムニエがそれぞれ30〜40%、シャルドネが20〜30%とされ、ドサージュ(瓶詰め前に加える糖分)は1リットルあたり7グラムです。青りんごや柑橘、白い花を思わせる明るい果実味に、ブリオッシュのような熟成香が重なる、親しみやすい辛口として紹介されています。甘辛度の表示の意味はブリュットの記事で一覧にしています。

ロゼ アンペリアル

モエ アンペリアルと同じく辛口のロゼで、いちごやラズベリーのような赤い果実の香りが持ち味です。華やかな色合いからお祝いの席で選ばれることも多い銘柄です。ロゼ・シャンパンの造り方や楽しみ方はロゼ・シャンパンの記事にまとめています。

ネクター アンペリアルとネクター アンペリアル ロゼ

「ネクター(Nectar)」は、ギリシャ神話の神々の飲み物に由来する言葉で、その名のとおり甘みを感じる仕上がりです。甘辛度はドゥミ・セックで、辛口のシャンパンが苦手な人や、フルーツを使ったデザートと合わせたいときに向いています。ロゼ版は、ピノ・ノワールとムニエを主体にした果実味の豊かなタイプです。

アイス アンペリアル

2011年に登場した、氷を入れて飲むことを前提に設計されたシャンパンです。シャンパンに氷を入れるのは邪道とされてきましたが、氷で薄まることを見越して味わいを濃く組み立てているのが特徴です。大ぶりのグラスに大きめの氷を入れ、ミントやライム、グレープフルーツの皮などを添える飲み方が提案されており、夏のリゾートやパーティー向けの銘柄として位置づけられています。

グラン ヴィンテージ

ぶどうの出来がとくによい年だけに造る、単一年のシャンパンです。1842年に始まったモエ・エ・シャンドンのヴィンテージ造りの流れをくむもので、毎年同じ味をめざすアンペリアルとは反対に、その年ならではの個性を表現することを重視しています。白とロゼがあり、2026年時点の公式サイトでは2016年を最新のヴィンテージとして紹介しています。長く熟成させたものを改めて出荷する「グラン ヴィンテージ コレクション」もあります。

このほか、プレステージ・キュヴェとして位置づけられる「コレクション アンペリアル(Collection Impériale n°1)」や、アーティストとのコラボレーションによる限定ボトルなども時期によって登場します。小容量のミニボトルや、大人数向けの大きなボトルなど、容量のバリエーションが多いのもモエの特徴です。

選び方と楽しみ方

はじめてモエを選ぶなら、まずはモエ アンペリアルが基準になります。メゾンのスタイルがわかりやすく、和食から洋食まで幅広い料理に合わせやすい辛口です。甘いお酒が好きな人や乾杯のあとにデザートと合わせたい場面ではネクター アンペリアル、華やかさを出したいお祝いにはロゼ アンペリアル、特別な記念日にはグラン ヴィンテージ、と場面ごとに選び分けると迷いにくくなります。

  • 温度:よく冷やして8〜10度前後が目安。ヴィンテージものは冷やしすぎない方が香りが開きやすい
  • グラス:泡を眺めるならフルートグラス、香りを楽しむなら白ワイン用のグラスも向く
  • 抜栓:栓が飛ばないよう親指で押さえ、瓶を傾けてゆっくり回すと音を立てずに開けられる
  • 料理:辛口は生牡蠣やカルパッチョ、天ぷら、鶏のローストなどと。甘口のネクターはフルーツタルトや、塩気のあるブルーチーズとも好相性

知名度の高さと華やかなボトルから、誕生日や結婚祝い、開店祝いなどの贈り物にもよく選ばれます。ギフトボックス入りや名入れのサービスを用意している販売店もあるので、贈る場面に合わせて探してみるとよいでしょう。

まとめ

モエ・エ・シャンドンは、1743年にクロード・モエがエペルネで創業したシャンパンメゾンで、1833年にシャンドン家が加わって現在の名前になりました。ナポレオンとのゆかりから生まれた「アンペリアル」の各銘柄を中心に、辛口のモエ アンペリアル、ロゼ アンペリアル、甘口のネクター アンペリアル、氷で楽しむアイス アンペリアル、単一年のグラン ヴィンテージと、場面に合わせて選べる幅広いラインナップを持っています。ドン・ペリニヨンはモエ・エ・シャンドンから生まれ、いまは同じLVMHグループの独立したブランドとして続いている、という関係も覚えておくと、シャンパン選びがいっそう楽しくなります。

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

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