ワインの「ヴィンテージ」とは、原料のブドウが収穫された年のことです。ラベルに書かれた年号がそれにあたり、誕生日や記念日に合わせて贈る「生まれ年ワイン」は、その人が生まれた年に収穫されたブドウから造られたワインを指します。古いワインほど高価で美味しいとは限らないため、生まれ年ワインを選ぶときは、長期熟成に向くタイプかどうかと保管状態を確かめることが大切です。
ヴィンテージの意味
ヴィンテージ(vintage)は、もともと「ブドウの収穫」や「その年に造られたワイン」を意味する言葉です。フランス語ではミレジム(millésime)と呼ばれます。ワインのラベルに「2020」とあれば、2020年に収穫されたブドウを使ったワインという意味で、瓶詰めした年や発売した年ではありません。
日本では「ヴィンテージ」というと「年代物」「古くて価値があるもの」という意味で使われることもありますが、ワインの世界ではあくまでも収穫年を表す言葉です。昨年収穫されたブドウのワインにも、ヴィンテージは表示されます。
なお、収穫年を表示するときに、すべてのブドウがその年のものである必要はなく、ヨーロッパ連合(EU)のルールや、日本ワインの表示ルールでは、その年に収穫されたブドウを85%以上使っていれば表示できるとされています。
ノン・ヴィンテージ(NV)
複数の年のワインをブレンドして造るものは、収穫年が表示されず「ノン・ヴィンテージ(NV)」と呼ばれます。シャンパーニュの多くはこの方式で、年ごとの出来の差をならし、その造り手らしい味わいを毎年安定して届けることを目的にしています。特に出来のよい年だけに造られるシャンパーニュは「ヴィンテージ・シャンパーニュ」として区別されます。
ヴィンテージで味わいが変わる理由
ワインはブドウだけから造られるため、その年の天候が味わいに表れます。日照が多く暖かい年はブドウがよく熟して果実味豊かで力強いワインになりやすく、雨が多く涼しい年は酸が高く軽やかなワインになりやすい傾向があります。開花期の霜や収穫期の長雨、雹(ひょう)などに見舞われると、生産量が大きく減ることもあります。
特に、ボルドーやブルゴーニュなど気候が年によって大きく揺れる産地ほど、ヴィンテージの差が出やすいといわれます。反対に、天候が毎年安定している産地では、年ごとの差は比較的小さめです。産地ごとの年の出来を一覧にした表は「ヴィンテージチャート」と呼ばれ、ワイン専門誌や販売店などが公開しています。ただし、評価が低い年でも、優れた造り手は丁寧な選果によって良いワインを造ることがあり、早く飲み頃を迎えて親しみやすいワインになることもあります。
生まれ年ワインの選び方
誕生日、成人のお祝い、結婚記念日、還暦などに、その年のワインを贈るのは人気のある贈り方です。ただ、何十年も前のワインは選び方を間違えると、飲み頃を過ぎて香りや味わいが衰えていることがあります。選ぶときは次の点を意識してください。
長期熟成に向くワインを選ぶ
すべてのワインが長く熟成できるわけではありません。数十年の熟成に耐えやすいのは、もともと酸や渋み、糖分、アルコールがしっかりしたワインです。
| タイプ | 例 | 熟成に向く理由 |
|---|---|---|
| 格の高い赤ワイン | ボルドーの格付けシャトー、バローロなど | 豊富なタンニンと酸が長い熟成を支える |
| 極甘口ワイン | ソーテルヌなどの貴腐ワイン | 糖分と酸が多く、劣化しにくい |
| 酒精強化ワイン | マデイラ、収穫年入りのポート(コリェイタ、ヴィンテージ・ポート) | 度数が高く、非常に長持ちする |
| ヴィンテージ・シャンパーニュ | 出来のよい年だけに造られるもの | 瓶内で長く熟成し、香りが複雑になる |
30年、40年と古い年のワインを探すなら、酒精強化ワインや貴腐ワインは比較的状態が保たれやすく、選択肢も見つけやすいといわれます。ソーテルヌなどの甘口ワインは、お酒に強くない方にも少量ずつ楽しんでもらいやすい点も利点です。
保管状態と販売店を確かめる
古いワインの品質は、それまでどのような環境で保管されてきたかに大きく左右されます。温度と湿度が管理されたセラーで保管されていたか、液面が大きく下がっていないか、ラベルやキャップの状態はどうかなどを確認し、来歴をきちんと説明してくれる販売店から購入すると安心です。
贈る相手の好みを考える
熟成したワインは、果実の香りよりも、なめし革や紅茶、きのこ、ドライフルーツのような熟成香が中心になり、若いワインとは別物の味わいになります。贈る相手が若々しい果実味を好む場合は、最近の年号のワインを選んで「これから一緒に熟成させる」という贈り方もあります。生まれた年に買って記念の年に開ける、といった楽しみ方も素敵です。贈り物の選び方はワインのギフトの記事でも紹介しています。
古いワインを開けるときの注意
熟成したワインを開けるときは、次のことに気をつけると失敗しにくくなります。
- 数日前からボトルを立てておき、瓶の底に澱(おり)を沈めておく
- 古いコルクはもろくなっていることがあるので、ゆっくり慎重に抜く。二枚刃式のオープナーが使われることもある
- 澱を入れないよう静かに注ぐ。必要に応じて、別の容器に移すデカンタージュをする
- 開けてから香りが一気に変化することがあるので、あまり時間を置かずに楽しむ
保管がよくても、熟成のピークを過ぎているワインもあります。古いワインは、状態の良し悪しも含めて「その年を味わう」体験として楽しむ気持ちで向き合うのがよいでしょう。
ラベルで見るヴィンテージの表示
ヴィンテージは、ワインの表ラベルに大きく書かれていることもあれば、裏ラベルやボトルの首の部分に小さく書かれていることもあります。フランスのシャンパーニュでは「ミレジメ(Millésimé)」、スペインでは「コセチャ(Cosecha)」、イタリアでは「ヴェンデミア(Vendemmia)」という言葉が収穫年の表示に使われることがあります。
ポートワインには、収穫年を名乗る種類がいくつかあり、特に出来のよい年だけに造られる「ヴィンテージ・ポート」は、長い瓶熟成に向くことで知られます。一方、「LBV(レイト・ボトルド・ヴィンテージ)」は、単一年のワインを樽で長めに熟成させてから瓶詰めしたもので、比較的早くから飲みやすく仕上げられています。同じ年号付きでもタイプによって熟成の考え方が違うので、贈り物にするときは種類まで確認しておくとよいでしょう。
まとめ
ワインのヴィンテージとは、原料のブドウが収穫された年のことで、その年の天候がワインの味わいに表れます。複数年のワインをブレンドしたものはノン・ヴィンテージと呼ばれます。生まれ年ワインを選ぶときは、格の高い赤ワインや貴腐ワイン、酒精強化ワインなど熟成に耐えるタイプを選び、保管状態の確かな販売店で購入するのが基本です。ワインの種類全般についてはワインの基礎知識をご覧ください。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



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