ルイ・ジャド(Louis Jadot)とは、フランス・ブルゴーニュ地方のボーヌに本拠を置くワインの造り手で、1859年創業の老舗メゾンです。自社畑のブドウと買い付けたブドウの両方からワインを造る「ネゴシアン」として知られ、手ごろなブルゴーニュから特級畑のワインまで、幅広いラインナップを持っています。バッカス(酒の神)の横顔を描いたラベルが目印で、ブルゴーニュワインの入門にも、じっくり味わう一本にも選ばれてきた名前です。
ルイ・ジャドとはどんな造り手か
ルイ・ジャドは、ブルゴーニュワインの中心地のひとつであるボーヌの町に拠点を置くメゾン(ワイン商・生産者)です。ブルゴーニュには、自分の畑のブドウだけでワインを造る「ドメーヌ」と、ブドウやワインを買い付けて仕立てる「ネゴシアン」という二つの形がありますが、ルイ・ジャドはその両方の顔を持っています。
ネゴシアンとしての強みは、北のシャブリから南のボージョレまで、ブルゴーニュの広い範囲のワインを一つのブランドで届けられることです。一方で、コート・ドールの一級畑・特級畑を含む自社畑も多く持っており、造り手のサイトによると所有する畑は500エーカーあまり(約210ヘクタール)、そのうちコート・ドールの一級・特級畑だけで約280エーカーにのぼるとされています。大きな規模と、畑ごとの個性を大切にする姿勢を両立させているのが、ルイ・ジャドの特徴です。
ブルゴーニュという産地そのものについては、ブルゴーニュワインの記事でくわしく紹介しています。
ルイ・ジャドの歴史
ジャド家とボーヌの結びつきは、メゾンの創業よりも前にさかのぼります。1826年、ジャド家はボーヌの一級畑「クロ・デ・ズルシュル(Clos des Ursules)」を手に入れました。この畑は現在もルイ・ジャドを象徴する畑のひとつです。
メゾンとしての出発点は1859年です。ルイ・アンリ・ドニ・ジャドが、ボーヌにあったネゴシアンの商会を買い取ったことから、ルイ・ジャドの名を冠したワイン商の歴史が始まりました。
20世紀に入ると、ジャド家以外の人物もメゾンを支えるようになります。1954年に入社したアンドレ・ガジェは、1962年に経営を任され、のちにその息子ピエール・アンリ・ガジェが社長としてメゾンを率いました。1985年には、アメリカでルイ・ジャドの輸入を長く担ってきたコブランド社の創業者一族(コップ家)がメゾンを取得します。経営の中心にはその後もガジェ家が残り、家族経営の空気を保ちながら事業を広げてきました。
醸造の考え方と醸造家
ルイ・ジャドのワインの方向性を語るうえで欠かせないのが、醸造責任者ジャック・ラルディエールです。1970年に技術責任者として迎えられたラルディエールは、40年以上にわたってメゾンのワイン造りを率いました。その後を継いだのがフレデリック・バルニエで、2010年に入社してラルディエールのもとで経験を積み、2013年に技術責任者となっています。
造り手が掲げているのは、畑の個性(テロワール)をできるだけ素直にワインに映すことです。可能な場合は畑や醸造所に自然にいる酵母で発酵させ、新しい樽の使い方も控えめにする、といった方針が紹介されています。樽については、1996年に樽メーカーと組んで自社の製樽会社「カデュス(Cadus)」を立ち上げており、ワインを寝かせる樽にまで目を配っていることがうかがえます。
ルイ・ジャドの主なラインナップ
ルイ・ジャドの魅力は、価格帯も産地も異なるワインが一つの名前のもとにそろっていることです。代表的なものを、産地ごとに整理してみます。
| 産地・格付け | 主なワイン | 特徴 |
|---|---|---|
| 地方名(ブルゴーニュ) | ブルゴーニュ・ルージュ(ピノ・ノワール)、ブルゴーニュ・ブラン(シャルドネ) | ブルゴーニュらしさを知る入り口になる赤と白 |
| シャブリ | シャブリ | シャルドネから造る、すっきりした辛口白 |
| マコネ | マコン・ヴィラージュ、プイィ・フュイッセ | 果実味のあるシャルドネの白。プイィ・フュイッセはドメーヌ・フェレも傘下に |
| ボージョレ | ボージョレ・ヴィラージュ、シャトー・デ・ジャックのムーラン・ナ・ヴァン | ガメイから造る、軽やかなものからしっかりしたものまで |
| コート・ドールの村名・一級・特級 | ボーヌ一級クロ・デ・ズルシュルなど | 畑ごとの違いを楽しむ本格派 |
まず知っておきたい「ブルゴーニュ」の赤と白
ブルゴーニュの赤はピノ・ノワール、白はシャルドネから造られるのが基本です。ルイ・ジャドの地方名ワインは、その二つの品種の持ち味を手ごろに知る一本として、ワインショップでもよく見かけます。品種そのものについてはピノ・ノワールやシャルドネの記事も参考になります。
ボージョレとマコネのドメーヌ
ルイ・ジャドはコート・ドールだけでなく、南のボージョレとマコネにも拠点を持っています。1996年にはボージョレのムーラン・ナ・ヴァンにあるシャトー・デ・ジャックを取得し、2008年にはプイィ・フュイッセの名門ドメーヌ・フェレ(J.A.フェレ)を傘下に加えました。ボージョレというと新酒のイメージが強いかもしれませんが、こうした畑ではじっくり熟成させるタイプの赤も造られています。新酒についてはボージョレ・ヌーヴォーの記事で紹介しています。
ルイ・ジャドの選び方と楽しみ方
ルイ・ジャドは銘柄の数が多いので、最初は「産地名」と「格付け」を目安にすると選びやすくなります。ラベルには、ブルゴーニュ、村名、一級(Premier Cru)、特級(Grand Cru)といった格付けと畑の名前が書かれており、範囲が狭く格付けが上がるほど、個性がはっきりして熟成にも向くワインになる傾向があります。
- はじめての一本なら:地方名の「ブルゴーニュ」の赤か白
- すっきりした白が好きなら:シャブリ
- ふくらみのある白が好きなら:マコン・ヴィラージュやプイィ・フュイッセ
- 軽やかな赤を気軽に楽しみたいなら:ボージョレ・ヴィラージュ
- 特別な日や贈り物には:村名や一級畑のワイン
料理との合わせ方では、ピノ・ノワールの赤は鶏肉や豚肉のロースト、きのこを使った料理などと相性がよいとされます。シャルドネの白は、魚介や鶏肉のクリーム煮などにも合わせやすいでしょう。すっきりしたシャブリなら、魚介のシンプルな料理とも寄り添います。シャブリの産地についてはシャブリの記事もどうぞ。
ピノ・ノワールの赤は、冷やしすぎると香りが閉じてしまうため、少しひんやりと感じる程度の温度で飲むのがおすすめです。一方、白は冷蔵庫から出して少し置き、冷たすぎない状態で味わうと、香りが開きやすくなります。
まとめ
ルイ・ジャドは、1859年にボーヌで生まれたブルゴーニュの老舗メゾンです。ネゴシアンとして北のシャブリから南のボージョレまで幅広く手がける一方、コート・ドールの一級・特級を含む自社畑も持ち、テロワールを素直に映すワイン造りを続けています。バッカスのラベルを目印に、まずは地方名のブルゴーニュから、気に入ったら村名や一級畑へと少しずつ広げていくと、ブルゴーニュの奥行きを自然に感じられるはずです。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



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