アスティ・スプマンテとモスカート・ダスティの違いと天使のアスティ

アスティ・スプマンテとモスカート・ダスティの違いと天使のアスティ シャンパン・スパークリング

アスティ・スプマンテとは、イタリア北西部ピエモンテ州で、モスカート・ビアンコ種から造られる甘口のスパークリングワインです。同じブドウから造られる「モスカート・ダスティ」とは同じDOCG(原産地呼称)の仲間ですが、アスティ・スプマンテはしっかり泡立つスプマンテ、モスカート・ダスティは泡がおだやかな弱発泡で、アルコール度数もより低いという違いがあります。

どちらもマスカットそのもののような華やかな香りとやさしい甘さが魅力で、ワインに慣れていない人にも親しみやすいお酒です。この記事では、アスティDOCGの規定をもとに2つの違いを整理し、造り方や楽しみ方、日本でよく見かける「天使のアスティ」についても紹介します。

アスティDOCGとは

アスティは、ピエモンテ州のアスティ県、クーネオ県、アレッサンドリア県にまたがる51の町村を産地とする原産地呼称です。1967年にDOCとなり、1993年にイタリアの原産地呼称で最上位のDOCG(統制保証原産地呼称)に格上げされました。

規定では、ブドウの97%以上をモスカート・ビアンコ種にすることが定められています。残りの3%までは、ピエモンテ州で栽培が認められた香りの高い白ブドウを使えます。つまりアスティは、実質的にモスカート・ビアンコという品種の香りを味わうためのワインだといえます。品種そのものについてはモスカートの記事で詳しく紹介しています。

現在のアスティDOCGには、次のタイプが含まれています。

  • アスティ(アスティ・スプマンテ):タンク内二次発酵で造る発泡ワイン
  • アスティ・メトド・クラッシコ:瓶内二次発酵で造る発泡ワイン
  • モスカート・ダスティ:弱発泡の甘口ワイン
  • モスカート・ダスティ・ヴェンデミア・タルディーヴァ:遅摘みのブドウから造る甘口ワイン

このほか、サンタ・ヴィットリア・ダルバとストレーヴィという2つのサブゾーン(地区名を付記できる区域)があります。なお、以前はアスティのサブゾーンだったカネッリは、現在は独立したDOCGになっています。

アスティ・スプマンテとモスカート・ダスティの違い

2つのいちばん大きな違いは、泡の強さとアルコール度数です。どちらもブドウ由来の糖分を残して甘口に仕上げるのが基本ですが、アスティDOCGの規定では次のように分けられています。

項目 アスティ・スプマンテ モスカート・ダスティ
泡 スプマンテ(しっかりした発泡) 弱発泡(ガス圧2.5バール以下)
実際のアルコール度数 6%以上 4.5〜6.5%
総アルコール度数(残糖を含めた潜在分) 11.5%以上 11%以上
甘辛度 パ・ドゼ(極辛口)から甘口まで認められる 甘口
ヴィンテージ表示 任意 義務

「総アルコール度数」とは、実際に含まれるアルコールに、残っている糖分がすべて発酵したと仮定した分を足した数字です。モスカート・ダスティの場合、実際のアルコールは4.5〜6.5%と低い一方、総アルコールは11%以上と決まっているので、そのぶん多くの糖分がワインに残ります。これが、モスカート・ダスティのとろりとした甘さと軽い飲み口の理由です。

アスティ・スプマンテは、泡がしっかりしている分だけ爽快感があり、乾杯やお祝いの席に向いています。モスカート・ダスティは泡がやさしく、度数も低めなので、食後にゆっくり楽しむデザートワインとして親しまれています。

なお、アスティ・スプマンテは長く甘口のワインとして知られてきましたが、現在の規定ではパ・ドゼ(極辛口)から甘口のドルチェまで、幅広い甘辛度が認められています。そのため「アスティ・セッコ」のような辛口寄りのものも造られています。ラベルの甘辛度表示を確認して選ぶと安心です。

アスティの造り方

アスティ・スプマンテの多くは、大きな密閉タンクの中で発酵させるタンク内発酵(マルティノッティ方式、シャルマ方式とも呼ばれます)で造られます。規定でも、タンクで泡を生む工程は瓶内での落ち着かせる期間を含めて1か月以上と定められています。

一般的な流れとしては、搾ったブドウ果汁を低温で保存しておき、必要な分をタンクに移して発酵させます。発酵で生まれた炭酸ガスをタンクの中に閉じ込めながら、狙ったアルコール度数と甘さになったところで冷やして発酵を止め、ろ過して瓶詰めします。発酵を途中で止めるので、ブドウの糖分と香りが残り、アルコール度数が低く甘い発泡ワインになるわけです。

酵母と接する時間が短く、熟成もさせないため、モスカート・ビアンコ種の持つマスカットやオレンジの花、桃のような香りがそのまま生かされます。一方、瓶内二次発酵で造るアスティ・メトド・クラッシコは、規定で9か月以上澱と一緒に寝かせることになっており、より落ち着いた味わいになります。

タンク内発酵という製法は、アスティの醸造試験所の所長だったフェデリコ・マルティノッティが1895年に特許を取ったものです。アスティの土地は、イタリアの発泡ワインの歴史と深く結びついています。イタリアの発泡ワイン全般についてはスプマンテの記事にまとめています。

「天使のアスティ」とは

日本でアスティを探すと、よく目にするのが「天使のアスティ」という商品です。これは、ピエモンテ州の生産者サンテロ社(Santero F.lli & C.)が造るアスティで、ワインの輸入・卸を手がけるモトックスが日本で取り扱っています。

輸入元の商品情報によると、ブドウはモスカート・ビアンコ100%、タイプは甘口のスパークリングワインで、アルコール度数は7.5%とされています。アスティらしいマスカットの華やかな香りとやさしい甘さを手軽に楽しめる1本として、酒販店やスーパーなどで広く扱われています。なお、度数などの細かな情報は年や仕様によって変わることがあるので、購入時にラベルで確認してください。

アスティにはほかにも多くの生産者がいて、甘さの度合いや香りの出方に少しずつ個性があります。甘口のスパークリング全般から選びたいときは、スパークリングワインの選び方も参考にしてください。

アスティとモスカート・ダスティの楽しみ方

温度とグラス

どちらも、6〜8℃前後とよく冷やして飲むのが基本です。香りが魅力のワインなので、細長いフルートグラスのほか、口がややすぼまった白ワイン用のグラスで香りを楽しむのもよい方法です。開けた後は泡も香りも抜けやすいので、早めに飲み切りましょう。

合わせる料理とデザート

甘さと香りがはっきりしているので、デザートとの相性のよさが一番の持ち味です。

  • フルーツ:桃、メロン、いちご、ぶどうなど、みずみずしい果物
  • 焼き菓子:パネットーネ、ビスコッティ、ヘーゼルナッツを使ったお菓子
  • クリーム系:フルーツタルト、ショートケーキ、パンナコッタ

甘いワインは、合わせるデザートの甘さがワインより強すぎないほうがバランスよく感じられます。チョコレートの濃厚なケーキより、果物を使った軽いデザートのほうが合わせやすいでしょう。ほかに、塩気のある生ハムとメロンの前菜や、スパイスの効いたエスニック料理と合わせる楽しみ方もあります。

こんな人に

アルコール度数が低く、甘くて香りが華やかなので、ワインの渋みや酸味が苦手な人や、少しだけ飲みたいときに向いています。家族や友人が集まる食後のデザートの時間に、気軽に開けられる発泡ワインです。辛口の泡との違いはスパークリングワインの基本で整理しています。

まとめ

アスティ・スプマンテとモスカート・ダスティは、どちらもピエモンテ州のモスカート・ビアンコ種から造られる、アスティDOCGのワインです。アスティ・スプマンテはしっかりした泡の発泡ワイン、モスカート・ダスティは実際のアルコール度数4.5〜6.5%の弱発泡ワインで、より甘く軽やかなのが違いです。日本でおなじみの「天使のアスティ」は、サンテロ社が造りモトックスが輸入する甘口のアスティです。よく冷やして、果物や焼き菓子と一緒に楽しんでみてください。

※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

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