スパークリングワインとは、炭酸ガスを含んだ発泡性のワインをまとめて呼ぶ言葉です。シャンパン(シャンパーニュ)もスパークリングワインの一種ですが、フランスのシャンパーニュ地方で、定められた品種と製法で造られたものだけが名乗れる特別な呼び名です。つまり「シャンパンはすべてスパークリングワインだけれど、スパークリングワインがすべてシャンパンではない」という関係になります。
スパークリングワインの基本
ワインはぶどうの糖分を酵母が分解してアルコールにする「発酵」によって生まれます。このとき同時に炭酸ガスも発生しますが、ふつうのワイン(スティルワイン)ではガスは外に逃がされます。スパークリングワインは、このガスをワインの中に閉じ込めたり、あとから加えたりして泡を持たせたものです。
泡の強さにも区分があります。EU の規則では、20℃でのガス圧が3気圧(3バール)以上のものを発泡性のワイン、1〜2.5バールのものを弱発泡性のワインとして分けています。フランスの「ペティヤン」、イタリアの「フリッツァンテ」は、この弱発泡性のタイプを指すことが多い言葉です。日本では一般に、泡の強弱にかかわらず「スパークリングワイン」と呼ばれています。
色は白が中心ですが、ロゼや赤もあります。イタリアのランブルスコのように、微発泡の赤ワインが地域の名物になっている例もあります。
シャンパンとスパークリングワインの違い
シャンパンを名乗るには、フランスのシャンパーニュ地方の決められた区域でぶどうを育て、規定の品種を使い、瓶の中で二度目の発酵をさせて泡を生む方法で造る必要があります。瓶詰めのあと最低でも15か月は熟成させること、収穫年を表示するヴィンテージものは3年以上熟成させることなども決まっています。これらを満たさないワインは、たとえ同じ造り方をしていてもシャンパンとは名乗れません。
この名前は日本でも守られています。2019年に発効した日EU経済連携協定(EPA)では、お互いの酒類の地理的表示を保護することが決まり、シャンパーニュもその対象に含まれています。日常会話では泡のワイン全般を「シャンパン」と呼ぶこともありますが、ラベルや売り場ではシャンパーニュ産のものだけを指す言葉だと覚えておくと混乱しません。
なお、シャンパン以外のスパークリングワインが格下というわけではありません。同じ瓶内二次発酵で丁寧に造られたものも多く、産地ごとの個性があります。シャンパンの定義や造り方をくわしく知りたいときは「シャンパンとは」の記事も参考にしてください。
国ごとの呼び名
スパークリングワインは世界中で造られていて、国や産地によって呼び名が変わります。ラベルでよく見かける言葉をまとめました。
| 国 | 主な呼び名 | ひとこと |
|---|---|---|
| フランス | シャンパーニュ、クレマン、ヴァン・ムスー、ペティヤン | シャンパーニュ以外の地域で瓶内二次発酵で造るものは「クレマン・ダルザス」「クレマン・ド・ブルゴーニュ」などと呼ばれる |
| イタリア | スプマンテ、フリッツァンテ | スプマンテは発泡ワインの総称。プロセッコ、アスティ、フランチャコルタなど産地名で呼ばれることも多い |
| スペイン | カヴァ、エスプモーソ | カヴァは瓶内二次発酵で造る原産地呼称。カタルーニャ州での生産が中心 |
| ドイツ | ゼクト | ドイツ語圏の発泡ワインの呼び名 |
| ポルトガル | エスプマンテ | ポルトガル語で発泡ワインのこと |
| 日本 | スパークリングワイン、発泡ワイン | 国内のワイナリーでも瓶内二次発酵のものが造られている |
イタリアの発泡ワインについては「スプマンテ」、スペインのカヴァについては定番銘柄を取り上げた「フレシネ コルドン・ネグロ」の記事でも紹介しています。
泡の生まれ方(主な製法)
スパークリングワインの味わいや泡の印象は、どうやって炭酸ガスを含ませるかで大きく変わります。代表的な製法は次のとおりです。
瓶内二次発酵(トラディショナル方式)
一度発酵を終えたワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加えて栓をし、瓶の中でもう一度発酵させる方法です。発生したガスが瓶から逃げられずにワインに溶け込みます。発酵を終えた酵母(澱)と長く触れることで、パンやナッツを思わせる香りと、きめ細かな泡が生まれやすくなります。シャンパン、クレマン、カヴァ、フランチャコルタなどがこの方法です。カヴァでは、瓶の中で澱とともに最低9か月熟成させることが定められています。
シャルマ方式(タンク内二次発酵)
二度目の発酵を、瓶ではなく密閉した大きなタンクの中で行う方法です。イタリアではマルティノッティ方式とも呼ばれます。大量に効率よく造れるうえ、ぶどうのみずみずしい果実の香りが残りやすいのが特徴です。プロセッコの多くや、マスカット系の甘い香りが魅力のアスティなどがこの方法で造られます。
そのほかの方法
- アンセストラル方式:発酵の途中でワインを瓶に詰め、残りの発酵で泡を生む古い方法。自然派の生産者が造る「ペット・ナット(ペティヤン・ナチュレル)」がよく知られています
- 炭酸ガス注入方式:できあがったワインに炭酸ガスを吹き込む方法。手ごろな価格帯の商品に見られます
甘辛度の表示と選び方
スパークリングワインのラベルには、甘さの目安を示す言葉が書かれていることがよくあります。辛口の代表が「ブリュット(Brut)」で、さらに辛い「エクストラ・ブリュット」「ブリュット・ナチュール」、やや甘い「エクストラ・ドライ」「セック」、甘口の「ドゥミ・セック」「ドゥー」などがあります。「ドライ」と書いてあるのにブリュットより甘い、という逆転があるので注意が必要です。残糖量の区分は「ブリュットとは」の記事で一覧にしています。
選ぶときは、次のような軸で考えると好みに近づけます。
- 香ばしさやコクを楽しみたいなら、瓶内二次発酵で熟成期間の長いもの(シャンパン、クレマン、カヴァのレゼルバ以上など)
- フルーティーで軽やかなものが好みなら、シャルマ方式のプロセッコなど
- 甘口がよければ、アスティやドゥミ・セック表示のもの
- 料理と合わせるなら、酸がしっかりしたブリュットが和洋どちらにも合わせやすい
泡のある酒は、揚げ物や塩気のある前菜、魚介とも相性がよいとされます。乾杯用だけでなく、食事を通して一本を楽しむ飲み方もあります。
おいしく飲むための扱い方
スパークリングワインは冷やして飲むのが基本です。冷蔵庫で数時間冷やすか、氷水を張ったバケツで冷やします。冷えていないと泡が勢いよく噴き出しやすく、開けるときにも危険です。
瓶の中は高い圧力がかかっているので、栓を開けるときは針金(ミュズレ)を外したら親指で栓を押さえ、瓶を斜めに傾けてボトルのほうをゆっくり回し、ガスを少しずつ逃がすように抜きます。栓の向きは人のいない方向にします。グラスは香りと泡が見えやすい細長いフルート型や、香りを楽しむならチューリップ型のワイングラスが向いています。
飲み残したときは、専用のストッパーで栓をして冷蔵庫へ。泡は少しずつ抜けていくので、なるべく早めに飲みきるのがおすすめです。
まとめ
スパークリングワインは泡を持つワインの総称で、シャンパンはその中でもシャンパーニュ地方の決まりに沿って造られたものだけの名前です。国ごとにクレマン、スプマンテ、カヴァ、ゼクトなどの呼び名があり、瓶内二次発酵かタンク内発酵かといった製法、ブリュットやドゥミ・セックといった甘辛度の表示で味わいの方向が見えてきます。ラベルのことばを手がかりに、好みの一本を探してみてください。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



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