フランスパンとは、小麦粉・水・塩・酵母という最小限の材料で焼く、皮がパリッと香ばしく、中が軽い食事パンのことです。日本では細長いバゲットやバタールをまとめてフランスパンと呼ぶことが多く、フランスでは形や大きさごとに別の名前がついています。
フランスパンの特徴
フランスパンの多くは、砂糖や油脂、卵、牛乳を使わない「リーン(シンプル)」な配合で作られます。小麦の風味と発酵の香りがそのまま味になるため、粉の選び方や、時間をかけた発酵、焼き方が仕上がりを大きく左右します。
- 皮(クラスト):高温のオーブンで蒸気を入れて焼き、薄くパリッと香ばしく仕上げる
- 中身(クラム):不ぞろいな大小の気泡があり、軽くて歯切れがよい
- クープ:表面に入れる切り込み。焼くときに生地がきれいに広がり、独特の模様になる
日本では、フランスパンに向く粉として、たんぱく質の量が強力粉と薄力粉の中間にあたる「準強力粉」がよく使われます。粉の違いについては準強力粉、代表的なフランスパン用粉はリスドォルの記事で紹介しています。
おいしいフランスパンの見分け方
パン屋でフランスパンを選ぶときは、見た目にもいくつかの手がかりがあります。表面の焼き色がしっかりついて、クープ(切り込み)が開いて縁が立っているものは、オーブンの中で生地がよくふくらんだしるしです。持ったときに大きさのわりに軽く感じるものは、中に気泡が多く、軽い食感が期待できます。焼きたての皮がパチパチと小さな音を立てることもあり、皮の薄さとパリッとした焼き上がりの目安になります。
形と大きさによる種類
フランスパンは、同じ生地でも成形の仕方で名前が変わります。日本の製パンで目安とされることの多い大きさとあわせて紹介します(店によって差があります)。
| 名前 | 意味・形 | 特徴 |
|---|---|---|
| バゲット(baguette) | 「棒」「杖」の意味。細長い棒形 | 皮の割合が多く、香ばしさが強い。生地350gほどで長さ65cm前後が目安とされる |
| バタール(bâtard) | 「中間」の意味。太く短い棒形 | バゲットと同じくらいの生地量で40cm前後。中身が多く、やわらかい |
| パリジャン(parisien) | 「パリっ子」の意味。太く長い | バゲットより大型 |
| フィセル(ficelle) | 「ひも」の意味。細い棒形 | 小型で皮が多く、カリッとした食感 |
| ブール(boule) | 「ボール」の意味。丸形 | 中身がしっとり。大きなものは切り分けて食べる |
| エピ(épi) | 「麦の穂」の意味 | 生地にはさみを入れて穂の形にしたもの。ベーコンを巻いたものも人気 |
| クッペ(coupé) | 「切られた」の意味。紡錘形 | 小型で、真ん中に1本クープが入る |
日本では長い間、バタールがもっとも親しまれ、バタールのことをバゲットと呼ぶこともよくありました。細いほど皮の割合が増えて香ばしく、太いほど中身のしっとり感を楽しめます。
フランスのパンのきまりと文化
フランスでは1993年に、パンについての政令(通称「パン政令」)が定められました。この中で、「伝統的フランスパン(pain de tradition française)」と名乗れるパンの条件が決められています。伝統的フランスパンは、小麦粉・水・塩・酵母(またはパン種)を基本とし、添加物を使わず、生地を冷凍しないことなどが求められます。
パリでは1994年から毎年、最優秀バゲットコンクールが開かれていて、優勝したパン屋は1年間、大統領官邸にバゲットを納めることで知られています。また2022年11月30日には、「バゲットの職人技と文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。毎日の食卓に欠かせない主食として、フランスの暮らしに深く根づいているパンです。
日本でフランスパンが広まるまで
日本では明治時代からパンが作られていましたが、皮が薄くパリッとした本格的なフランスパンが広まったのは、戦後しばらくたってからです。1965年、東京で開かれた国際見本市でパンを焼くために、フランスから若い職人フィリップ・ビゴが来日しました。ビゴは見本市のあと、神戸のパン店ドンクで技術指導にあたり、1966年に東京・青山の店に移ると、そこからフランスパンのブームが起こったとされています。
それまで日本で「フランスパン」というと、塩気が強くかたいパンという印象もあったといわれますが、本場の製法が伝わったことで、香ばしい皮と軽い中身をもつパンとして定着していきました。日本のパンの歩みは日本のパンの歴史で詳しく紹介しています。
食べ方と保存・温め直しのコツ
フランスパンは、焼きたてから時間がたつほど皮がしんなりし、中身はかたくなっていきます。おいしく食べるためのポイントをまとめます。
- 当日中に食べきれない分は、食べやすく切ってからラップで包み、保存袋に入れて冷凍する
- 冷凍したものは凍ったまま、トースターやオーブンで温め直す。表面に軽く霧を吹くと皮がパリッと戻る
- 冷蔵庫に入れると、でんぷんの劣化が進んでかたくなりやすいので避ける
- かたくなったものは、ラスクやパン粉、フレンチトースト、スープに浸すなどに使える
食べ方は、スープや煮込み料理に添える、チーズやハム、生ハムをのせる、バターとジャムで朝食に、オリーブオイルをつけるなどさまざまです。かたくなったバゲットで作るおやつはラスクの記事で紹介しています。冷凍のコツはパンの冷凍保存も参考にしてください。
フランスパンは料理に合わせやすいのも魅力です。薄く切ってトーストし、にんにくをこすりつけてオリーブオイルをたらせば、前菜やスープのおともになります。厚めに切って卵液にひたし、ひと晩置いて焼くフレンチトーストは、かたくなったパンのほうがおいしく作れます。トマトソースで煮込んだ料理や魚介のスープの皿に添えて、残ったソースをぬぐって食べるのもよい食べ方です。
まとめ
フランスパンは、小麦粉・水・塩・酵母を基本に焼く、皮が香ばしく中が軽い食事パンです。バゲット、バタール、ブール、エピなど、形や大きさで名前と食感が変わります。フランスでは1993年のパン政令で伝統的なパンの条件が定められ、2022年にはバゲットの職人技と文化がユネスコの無形文化遺産になりました。日本では1960年代に本格的な製法が伝わって広まり、いまでは身近な食事パンになっています。



コメント