イタリアパンとは、イタリア各地で作られてきたパンの総称で、オリーブオイルを使った平たいフォカッチャ、気泡の大きなチャバッタ、細長いグリッシーニなど、地方ごとに形も食感もまったく違うのが特徴です。食事と一緒に食べるシンプルなパンが中心で、お祝いの日には甘い発酵菓子のようなパンも焼かれます。
イタリアパンの特徴
イタリアは南北に長く、地方ごとに気候や食文化が違うため、パンも土地によって大きく異なります。小麦の種類でいえば、北部ではやわらかい普通小麦の粉、南部ではパスタにも使うデュラム小麦の粉(セモラ・リマチナータ)を使ったパンがよく見られます。
食卓でのパンの役割は、料理の脇役です。イタリアではパンにバターを塗る習慣はあまりなく、料理のソースをパンでぬぐって食べたり、オリーブオイルをつけたりして楽しみます。料理と一緒に食べることを前提に、塩気の控えめなシンプルなパンが多いのもそのためです。
代表的なイタリアパン
| パン | 地方 | 特徴 |
|---|---|---|
| フォカッチャ | リグーリア州(ジェノヴァ)が有名 | 平たく焼いたパン。オリーブオイルと塩、表面のくぼみが特徴 |
| チャバッタ | ヴェネト州 | 水分の多い生地で、大きな気泡ともっちりした食感。サンドイッチに |
| グリッシーニ | ピエモンテ州(トリノ) | 細い棒状でカリカリ。生ハムを巻いて前菜に |
| パーネ・トスカーノ | トスカーナ州など | 塩を入れずに焼く素朴なパン。塩気の強い料理と合わせる |
| パーネ・カラザウ | サルデーニャ州 | 紙のように薄く、パリパリに焼き上げた保存のきくパン |
| ピアディーナ | エミリア=ロマーニャ州(ロマーニャ地方) | 薄い円形の平焼きパン。具をはさんで食べる |
| パネットーネ | ロンバルディア州(ミラノ) | ドライフルーツ入りのドーム形の発酵菓子。クリスマスに |
| パンドーロ | ヴェネト州(ヴェローナ) | 星形の背の高い発酵菓子。粉砂糖をかけて食べる |
フォカッチャ
フォカッチャは、生地を天板に平たくのばし、指でくぼみをつけてオリーブオイルと塩をかけて焼くパンです。リグーリアのジェノヴァのものがよく知られ、表面はカリッと、中はもっちりとした食感です。ローズマリーやオリーブ、トマトをのせたものもあり、そのまま食べても、半分に切ってサンドイッチにしても楽しめます。オイルの風味がそのまま味になるので、エクストラバージンオリーブオイルを使うと香りが引き立ちます。
チャバッタ
チャバッタ(ciabatta)は「スリッパ」という意味で、平たく横長の形からついた名前です。伝統的なパンのように思われがちですが、生まれは比較的新しく、1982年にヴェネト州アドリアのパン職人アルナルド・カヴァッラーリが考案したとされています。フランスのバゲットのサンドイッチが人気になっていたことに対抗し、イタリアのサンドイッチ用のパンとして生まれたといわれます。
パーネ・トスカーノ
トスカーナ地方では、塩を入れないパンが伝統的に食べられてきました。塩なしになった理由には、かつての塩の高い税を避けたためという言い伝えなどがありますが、はっきりしたことはわかっていません。生ハムやサラミ、塩気の強いチーズ、味の濃い煮込み料理と合わせると、パンの素朴な味がちょうどよく感じられます。かたくなったパンは、パンとトマトのスープや、パンと野菜のサラダなどにも使われます。
グリッシーニ
グリッシーニは、鉛筆ほどの細さにのばした生地をカリッと焼き上げた、棒状のパンです。北イタリアのピエモンテ州、トリノで生まれたパンとして知られています。日持ちがするので、レストランのテーブルにあらかじめ置かれていることも多く、そのまま食べたり、生ハムを巻いて前菜にしたりします。家庭でも、細くのばして焼くだけなので作りやすいパンです。
パーネ・カラザウとピアディーナ
サルデーニャ島のパーネ・カラザウは、薄くのばした生地を焼いてふくらませ、2枚にはがしてからもう一度焼いた、紙のように薄いパンです。乾燥しているので長く保存でき、羊飼いが山へ持っていくパンだったといわれます。そのまま割って食べるほか、オリーブオイルと塩をふって温めたり、スープやソースでしとらせて食べたりします。
エミリア=ロマーニャ州のロマーニャ地方で食べられているピアディーナは、薄い円形の生地を鉄板などで焼いた平焼きパンです。焼きたてに生ハムやチーズ、ルッコラなどをはさみ、半分に折って食べるのが定番で、街の屋台でも売られています。
お祝いのパンと甘いパン
イタリアには、行事にあわせて焼かれる甘いパンもあります。ミラノのパネットーネは、レーズンやオレンジピールの入った、ふんわりと背の高い発酵菓子で、クリスマスの時期には日本でも輸入品が並びます。ヴェローナのパンドーロは、卵とバターをたっぷり使った黄金色の生地で、断面が星形になっているのが特徴です。
このほか、復活祭(イースター)には鳩の形をした「コロンバ」という発酵菓子が食べられます。どれも長い時間をかけて発酵させる生地で作られ、日持ちがするので、贈りものとしても喜ばれます。
イタリアパンの楽しみ方
- オリーブオイルと塩につけて、パンそのものの味を楽しむ
- トマトやにんにくをのせたブルスケッタにして前菜に
- パスタや煮込みの皿に残ったソースをパンでぬぐって食べる
- チャバッタやフォカッチャに生ハム、チーズ、野菜をはさんでパニーノに
- グリッシーニに生ハムを巻いて、ワインのおつまみに
パスタと合わせる場合は、ソースのよくからむトマト系やオイル系の皿と一緒に出すと、最後のひと口までソースを楽しめます。ワインとの組み合わせはワインの基礎知識も参考にしてください。フランスのパンとの違いが気になる場合はフランスパンの記事もあわせてどうぞ。
まとめ
イタリアパンは、地方ごとの食文化を映した多彩なパンです。オリーブオイルが香るフォカッチャ、1982年生まれのチャバッタ、トリノのグリッシーニ、塩を入れないトスカーナのパンなど、どれも料理と一緒に食べることを前提にした素朴な味わいです。クリスマスのパネットーネやパンドーロのように、行事を彩る甘いパンもあります。



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