食パンを冷蔵庫で保存すると、カビは生えにくくなりますが、パサついてかたくなりやすいので、基本的にはおすすめできません。冷蔵庫の温度帯は、パンのでんぷんが「老化」してかたくなる変化がもっとも進みやすい温度だからです。数日で食べきるなら常温、それ以上なら冷凍が、食パンの保存の基本です。
冷蔵庫に入れるとパンがかたくなる理由
焼きたてのパンがふんわりやわらかいのは、生地の中のでんぷんが水を抱えてやわらかい状態(糊化した状態)になっているからです。時間がたつと、このでんぷんが少しずつ水を手放し、規則正しく並び直して、かたくなっていきます。これを「でんぷんの老化」といいます。パンが翌日にはかさついたり、ぱさぱさしたりするのは、この老化によるものです。
でんぷんの老化は、0〜5℃前後の低い温度でとくに進みやすいことが知られています。家庭の冷蔵室はまさにこの温度帯にあたるため、冷蔵庫に入れた食パンは、常温に置いたものより早くかたくなってしまいます。一方、冷凍庫の温度(−18℃以下)まで下がると、パンの中の水分が凍って動けなくなるため、老化はほとんど進まなくなります。
| 保存場所 | でんぷんの老化 | カビ | 向いている期間 |
|---|---|---|---|
| 常温(直射日光・高温多湿を避ける) | ゆっくり進む | 夏場は生えやすい | 消費期限内、2〜3日程度 |
| 冷蔵室(0〜10℃) | もっとも進みやすい | 生えにくい | 基本的に不向き |
| 冷凍庫(−18℃以下) | ほとんど進まない | 生えない | 2週間〜1か月が目安 |
冷蔵庫に入れたほうがよい場合
冷蔵保存がいつも悪いわけではありません。次のような場合は、冷蔵庫のほうが向いています。
- 具を挟んだサンドイッチや惣菜パン:卵、ハム、ツナ、生クリームなど傷みやすい具が入ったパンは、パンの食感よりも衛生面を優先して冷蔵する。なるべくその日のうちに食べる
- クリームやカスタードが入った菓子パン:要冷蔵と表示されたものは必ず冷蔵する
- 真夏の室内が高温多湿になるとき:1〜2日で食べきる予定でもカビが心配な場合は、冷蔵より冷凍を検討し、冷凍が難しいときに限って冷蔵を使う
パッケージに「要冷蔵」「10℃以下で保存」などの表示がある場合は、その表示に従ってください。表示がない一般的な食パンは、常温保存を前提に作られています。
冷蔵庫に入れてかたくなった食パンを戻すには
すでに冷蔵庫に入れてかたくなってしまった食パンも、加熱すればある程度やわらかさを取り戻せます。老化したでんぷんは、温め直すと再び水を抱えやすくなるためです。
- トーストする:いちばん手軽な方法。表面に霧吹きで軽く水をかけてから焼くと、乾燥しすぎを防げる
- 電子レンジで軽く温める:ラップをふんわりかけて短時間温めると、やわらかくなる。加熱しすぎると、冷めたときにかえってかたくなるので数秒ずつ様子を見る
- 蒸す:蒸し器で短時間蒸すと、しっとりとした食感になる
それでもかたいときは、加工して食べるのがおすすめです。卵液にしっかりひたしてフレンチトーストにしたり、すりおろしてパン粉にしたり、小さく切ってスープのクルトンにしたりと、使いみちはたくさんあります。
食パンの正しい保存方法
食パンをおいしく保存するには、食べきるまでの日数で保存場所を決めるのがいちばんです。
2〜3日で食べきるなら常温
袋の口をしっかり閉じて、直射日光の当たらない涼しい場所に置きます。袋の中の空気を軽く抜いてから閉じると、乾燥を防げます。コンロのそばや家電の上など、熱がこもる場所は避けてください。夏場や湿気の多い時期は、常温でもカビが生えやすいので、早めに食べきるか冷凍に切り替えます。
それ以上なら冷凍
買ってきた日、または焼いた日のうちに、すぐに食べない分を冷凍するのが理想です。1枚ずつラップでぴったり包み、冷凍用の保存袋に入れて空気を抜いて冷凍します。食べるときは凍ったままトースターで焼けば、焼きたてに近い食感になります。詳しいやり方はパンの冷凍保存の記事にまとめました。
フランスパンや菓子パンの場合
食パン以外のパンも、基本の考え方は同じです。フランスパンのように皮がパリッとしたパンは、冷蔵庫に入れると皮がしなびて中がかたくなるので、とくに冷蔵には向きません。当日中に食べきれない分は、食べやすい大きさに切ってから冷凍し、食べるときにトースターやオーブンで温め直します。
具の入っていない菓子パンやロールパンも、常温か冷凍が基本です。一方、カレーパンなどの惣菜パンや、生クリームを使ったパンは傷みやすいため、表示を確認して冷蔵や冷凍を選んでください。
パンの保存についてよくある疑問
冷蔵庫に入れればカビは生えない?
冷蔵庫に入れると、カビの生える速さは遅くなりますが、まったく生えなくなるわけではありません。長く入れておけば、冷蔵庫の中でもカビが生えることがあります。しかも、そのあいだにパンはかたくなっていくので、「カビは防げたけれど、おいしくなくなった」という結果になりがちです。長く保存したいなら、冷凍庫を使いましょう。
野菜室なら大丈夫?
野菜室は冷蔵室より少し温度が高めに設定されていることが多いものの、それでもでんぷんの老化が進みやすい低い温度帯にあることに変わりはありません。冷蔵室よりはましでも、パンの保存場所としてはやはり向いていません。
カビが一部に生えたら、その部分を取れば食べられる?
パンのようにやわらかく水分を含む食品は、目に見えるカビの周りにも菌糸が広がっている可能性があります。一部だけ取り除いて食べるのは避け、カビが生えたパンは処分するのが安全です。同じ袋に入っていたほかのパンにも、カビがついていないかよく確認してください。
消費期限を過ぎたパンは?
袋入りの食パンには、多くの場合「消費期限」が表示されています。消費期限は、安全に食べられる期限の目安です。期限内に食べきれないとわかった時点で冷凍しておけば、無駄にせずに済みます。冷凍する場合も、なるべく早く、まだやわらかいうちに冷凍するのがおいしさを保つコツです。
まとめ
食パンを冷蔵庫に入れると、0〜5℃前後の温度でもっとも進みやすい「でんぷんの老化」によって、かたくパサついた食感になりがちです。数日で食べきるなら常温、それ以上は冷凍が基本で、冷蔵庫は具を挟んだパンや要冷蔵の表示があるパンに使います。かたくなってしまった食パンは、トーストや蒸し直しで戻すか、フレンチトーストやパン粉に活用すると無駄なく食べきれます。



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