天然酵母パンとは?イーストとの違いとパン酵母の種類・選び方

天然酵母パンとは?イーストとの違いとパン酵母の種類・選び方 パン

天然酵母パンとは、果物や穀物などから起こした酵母の種(パン種)を使って発酵させたパンのことです。ふつうのパンに使うイースト(パン酵母)も、もとは自然界の酵母を取り出して育てたものなので、両者の違いは「天然かどうか」というより、「パンに向く1種類の酵母を選んで純粋に増やしたものか、いろいろな微生物が一緒に育った種か」にあります。

パン酵母(イースト)とは

パンがふくらむのは、酵母(イースト)という微生物の働きによるものです。酵母は生地の中の糖を分解して、アルコールと炭酸ガスを作ります。この炭酸ガスが生地の中にたまってパンがふくらみ、アルコールなどの成分がパンの香りのもとになります。

市販のイーストは、パン作りに適した酵母を果実や穀類から選び出し、その1種類だけを純粋に培養したものです。国内でイーストを作るオリエンタル酵母工業によると、パン酵母がもっとも活発に働くのは30℃前後で、1gの中に約100億個もの生きた細胞が含まれています。性質がそろっているので、決まった時間で安定してふくらみ、パン屋や家庭で毎日同じように焼けるのが大きな利点です。生イーストとドライイーストの違いは生イーストの記事で紹介しています。

天然酵母とイーストの違い

天然酵母と呼ばれるものは、果物や穀物、野菜などに付いている酵母を、水や粉と一緒に育てて増やした種です。その中には酵母だけでなく、乳酸菌などほかの微生物も一緒にすみついていて、さまざまな種類の微生物の働きが合わさって、独特の香りや酸味、うまみが生まれます。

比べる点 イースト(パン酵母) 天然酵母(酵母種)
中身 パンに向く酵母1種類を純粋培養したもの 複数の酵母や乳酸菌などが一緒に育った種
発酵の力 強く安定している 穏やかで、種の状態や温度で変わりやすい
発酵にかかる時間 比較的短い 長くかかることが多い
味・香り 小麦の風味がすっきり出る 酸味やうまみ、複雑な香りが出やすい
扱いやすさ 計量して加えるだけ 種を起こしたり、継ぎ足したりする手間がかかる

「天然酵母だから体によい」「イーストは人工的」といった説明を見かけることがありますが、イーストも自然界から取り出した酵母を育てたもので、どちらかが体に悪いというものではありません。天然酵母パンの魅力は、主に味わいや食感、作り手のこだわりにあると考えるとよいでしょう。

天然酵母の種類

自家製酵母

パン屋や家庭で、レーズンやりんご、いちごなどの果物、ヨーグルト、米や麹などから酵母を起こして使うものです。素材によって香りや発酵の力が違い、同じ素材でも季節や環境で状態が変わります。手間はかかりますが、そのパン屋ならではの味を生む大きな要素になります。

市販の天然酵母種

家庭でも安定して使えるように、酵母種を乾燥させて商品にしたものもあります。たとえば、ホシノ天然酵母(1951年創業の会社が作るパン種)は、自然界から採取した酵母を日本古来の醸造技術を応用して育てたパン種として知られています。使う前に、粉と水を加えて「生種」を起こしてから使うのが一般的です。ほかに、白神山地で見つかった酵母を使った「白神こだま酵母」のように、乾燥させた形で売られ、使う前にぬるま湯で戻して使う製品もあります。

サワー種(ルヴァン)

小麦粉やライ麦粉と水を混ぜて、粉に付いている酵母や乳酸菌を育てる種です。フランスではルヴァン(levain)、英語ではサワードウと呼ばれます。乳酸菌の働きで酸味が出るのが特徴で、ドイツやロシアなどのライ麦パンには欠かせません。本場のライ麦の黒パンについてはロシアパンの記事でも紹介しています。

日本の酒種

日本には、日本酒づくりに使う麹や米から起こした「酒種」というパン種があります。よく知られているのが、東京・銀座の木村屋の酒種あんぱんで、明治時代の初めに、パンを日本人の口に合うものにしようと生み出されたものです。酒種のパンは、ほんのりとした甘い香りとしっとりした生地が特徴で、日本ならではの「天然酵母パン」のひとつといえます。日本のパンの歩みは日本のパンの歴史で紹介しています。

レーズン酵母の起こし方の基本

家庭で自家製酵母に挑戦するなら、レーズンを使う方法が比較的取り組みやすいとされています。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 保存びんを熱湯などで清潔にし、よく乾かす
  2. オイルコーティングされていないレーズンと水を入れる(好みで砂糖を少し加える)
  3. ふたをして、25℃前後の場所に置く。1日に1〜2回、びんを振ってふたを開け、空気を入れ替える
  4. 数日から1週間ほどで、レーズンが浮き、細かい泡が立って、ふたを開けるとシュワッと音がするようになったら酵母液のでき上がり
  5. 酵母液を粉と混ぜて元種を作り、パン生地に使う

自家製酵母は、雑菌が増えてしまうこともあります。カビが生えた、いやなにおいがする、液の色が明らかにおかしいといった場合は、迷わず捨ててください。でき上がった酵母液は冷蔵庫で保存し、早めに使いきります。

天然酵母パンの選び方と楽しみ方

  • 酸味が好きなら、ルヴァンやライ麦のサワー種を使ったハード系のパンを
  • やさしい甘みともっちり感なら、市販の天然酵母種を使った食パンや丸パンを
  • 果物の酵母のパンは、素材によって香りが違うので食べ比べが楽しい

天然酵母のパンは、発酵に時間をかけて作られることが多く、しっとりとした生地が長持ちしやすいといわれます。それでも、食べきれない分は早めに冷凍しておくのがおすすめです。保存の方法はパンの冷凍保存で紹介しています。小麦粉選びについては準強力粉の記事も参考にしてください。

まとめ

天然酵母パンは、果物や穀物などから起こした酵母種で発酵させたパンです。イーストもパン酵母という自然界の酵母を純粋に育てたもので、違いは「1種類の酵母か、いろいろな微生物が一緒に育った種か」にあります。天然酵母は発酵に時間がかかり扱いに手間がいりますが、そのぶん酸味やうまみ、深い香りを楽しめるのが魅力です。

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