生ハムとは、豚肉を塩漬けして、加熱せずに乾燥・熟成(ものによっては低温で燻製)させて作るハムのことです。日本の食品衛生法では「非加熱食肉製品」にあたり、そのまま薄く切って食べられるように作られています。イタリアのプロシュット、スペインのハモン、日本で多く作られているラックスハムなど、国や製法によってさまざまな種類があります。
生ハムと普通のハムの違い
スーパーでよく見かけるロースハムやボンレスハムは、塩漬けした豚肉を燻製し、ゆでたり蒸したりして加熱して仕上げたものです。これに対して生ハムは、加熱をせず、塩の力と時間をかけた乾燥・熟成によって作ります。加熱しないため、肉の繊維がやわらかく、ねっとりとした舌ざわりと、熟成による深いうまみが生まれます。
| 項目 | 普通のハム(ロースハムなど) | 生ハム |
|---|---|---|
| 加熱 | する(加熱食肉製品) | しない(非加熱食肉製品) |
| 作り方 | 塩漬け、燻製、湯煮・蒸煮 | 塩漬け、乾燥・熟成(低温燻製するものも) |
| 食感 | しっとり、弾力がある | ねっとり、とろけるよう |
| 味 | やさしい塩味 | 塩気がしっかりして、熟成のうまみが強い |
| 主な食べ方 | サンドイッチ、サラダ、焼いて | 薄切りでそのまま、前菜、果物と合わせて |
「生」と名前についていますが、生肉そのものではありません。塩漬けや乾燥によって水分を減らし、菌が増えにくい状態にしたうえで、衛生基準を満たして作られた加工品です。一方で、同じ「生」がつく生ソーセージは加熱が必要なので、名前だけで判断しないよう注意してください。
世界の主な生ハム
生ハムは、ヨーロッパを中心に、各地の気候や豚の品種を生かして作られてきました。
イタリアのプロシュット
イタリア語で生ハムは「プロシュット・クルード」、略して「プロシュット」と呼ばれます。代表的なのが、エミリア=ロマーニャ州パルマ周辺で作られる「プロシュット・ディ・パルマ(パルマハム)」と、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州サン・ダニエーレ周辺で作られる「プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ」です。どちらもEUの原産地呼称保護(DOP)を受けていて、決められた地域と製法で作られたものだけが、その名前を名乗れます。パルマハムは、塩だけを使って熟成させることで知られ、本物には公爵の冠をかたどった焼き印が押されています。
スペインのハモン
スペインでは生ハムを「ハモン」と呼びます。白い豚から作られる「ハモン・セラーノ」と、黒い豚の系統であるイベリコ豚から作られる「ハモン・イベリコ」が代表的です。イベリコ豚のうち、放牧されてどんぐりを食べて育ったものから作られるハモンは「ベジョータ」と呼ばれ、脂の香りと甘みが高く評価されています。スペインのバルでは、骨付きの塊から手で薄く切り出すのが伝統的なスタイルです。
フランス・ドイツの生ハム
フランス南西部のバイヨンヌ周辺では「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」と呼ばれる生ハムが作られています。ドイツには、南西部の森の地方で作られる、燻製の香りがしっかりした「シュヴァルツヴェルダー・シンケン」などがあります。
日本の生ハムとラックスハム
日本のスーパーで手頃な価格で売られている生ハムの多くは、「ラックスハム」と呼ばれるタイプです。JAS(日本農林規格)では、ラックスハムを「豚の肩肉、ロース肉またはもも肉を整形し、塩漬けし、ケーシングなどで包装して、または包装しないで、低温でくん煙するか、くん煙しないで乾燥したもの」と定めています。
ラックスハムは、ドイツの「ラックスシンケン」に由来する名前で、骨付きのもも肉を長期間熟成させるプロシュットやハモンに比べると、熟成期間が短く、塩気がやわらかく、燻製の香りがあるものが多いのが特徴です。サラダやカルパッチョ、手巻き寿司の具などにも使いやすく、日本の食卓で身近な生ハムとして親しまれています。国内にも、骨付きのもも肉を長期間熟成させる、ヨーロッパ式の生ハムを手がける生産者があります。
生ハムのおいしい食べ方
生ハムは、薄く切るほど口どけがよく、香りも引き立ちます。冷蔵庫から出したてだと脂がかたく、香りも感じにくいので、食べる少し前に室温に出しておくのがコツです。
- 果物と合わせる:メロンやいちじく、柿、洋梨など。果物の甘みと生ハムの塩気が引き立て合う
- パンと合わせる:バゲットやグリッシーニに巻いたり、オリーブオイルを塗ったパンにのせたりする(イタリアのパン)
- サラダ・前菜:ルッコラやチーズと合わせ、オリーブオイルをひと回し
- 仕上げにのせる:ピザやパスタに、焼き上がってからのせると、香りと食感が損なわれない
原木(骨付きの塊)で楽しむ
パーティーなどでは、骨付きのもも肉をまるごと熟成させた「原木」を専用の台に固定し、その場で切り分けて楽しむこともあります。切るときは、よく切れる細長いナイフで、繊維を断つように薄く削ぐのが基本です。切り口は乾きやすいので、使わないときは切り取った脂や皮をかぶせたり、ラップで覆ったりして乾燥を防ぎます。原木は量が多いので、保存方法は購入先の案内に従ってください。
ワインとの相性もよく、辛口のスパークリングワインや白ワイン、軽めの赤ワインがよく合います。パルマハムには、同じエミリア=ロマーニャ州の微発泡赤ワイン、ランブルスコを合わせるのも定番です(ワインの基本)。
保存方法と食べるときの注意
パック入りの生ハムは、表示に従って冷蔵保存し、開封後は乾燥しないよう、ラップでぴったり包んで早めに食べきります。スライスしたものは空気に触れると乾きやすく、色や香りも変わりやすいので、食べる分だけを出すようにしましょう。
生ハムは加熱していない食品のため、リステリア菌などへの注意が呼びかけられています。とくに妊娠中の人は、厚生労働省などが生ハムを含む非加熱の食品に気をつけるよう案内しているので、食べてよいか迷ったときは医師に相談してください。また、生ハムは塩分が多めの食品なので、食べる量はほどほどにするのが無難です。
まとめ
生ハムは、豚肉を塩漬けして加熱せずに乾燥・熟成させて作るハムで、日本では非加熱食肉製品にあたります。イタリアのパルマハムやサン・ダニエーレ、スペインのハモン・セラーノやハモン・イベリコ、日本で身近なラックスハムなど、産地や製法によって味わいはさまざまです。薄く切って室温に少し置き、果物やパン、ワインと合わせると、そのうまみを存分に楽しめます。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。



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