フードデリバリーの配達報酬は、会社の給与ではなく個人事業主としての収入なので、税金は自分で申告するのが基本です。会社員が副業で配達する場合、国税庁のルールでは給与以外の所得(報酬から経費を引いた額)が年20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要ですが、住民税は別で、市区町村への申告が必要になることがあります。専業や本業に近い形で配達する場合は、確定申告が必要になる人が多くなります。インボイス(適格請求書発行事業者)の登録は義務ではなく、登録すると消費税の申告が必要になります。
この記事では、国税庁などの公的情報をもとに、配達員が知っておきたい税金の基本を整理します(2026年10月時点)。個別の判断が難しい点は、税務署や税理士などの専門家に確認してください。
配達報酬は「事業所得」か「雑所得」
配達の報酬は、多くの場合、事業所得か雑所得(業務に係る雑所得)として申告します。国税庁は、業務に係る雑所得を「副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なもの」と説明しています。事業所得は、サービス業などの事業から生じる所得で、総収入金額から必要経費を引いて計算します。
どちらにあたるかは、事業としての規模や継続性、帳簿をつけて保存しているかなどで判断され、配達をしているから必ずどちら、と一律には決まりません。本業として配達している、副業として少しだけ配達している、などの状況で変わるので、迷う場合は税務署に相談してください。区分によって、青色申告ができるかどうか(事業所得なら可能)などが変わります。
確定申告が必要かどうか
会社員が副業で配達する場合:20万円の考え方
国税庁によると、給与を1か所から受けていて年末調整を受けている人は、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合に確定申告が必要です。ここでいう20万円は「所得」で、配達の報酬(収入)からガソリン代などの必要経費を引いた額です。報酬が20万円を超えていても、経費を引いた所得が20万円以下なら、この条件には当たりません。
ただし、20万円以下でも次のような点に注意が必要です。
- 配達の報酬は、掛け持ちしているすべてのサービスの分を合計して考えます(掛け持ちのやり方と注意点)
- 給与の年間収入が2,000万円を超える人や、2か所以上から給与を受けている人などは、別の条件で申告が必要になることがあります
詳しくは国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人で確認できます。
専業で配達する場合
給与のない人が配達を中心に働く場合は、20万円のルールは使えません。配達の所得を含めた1年間の所得の合計が、基礎控除などの所得控除の合計を上回るときは、確定申告が必要です。確定申告は、原則として翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。
住民税は別に考える
「20万円以下なら申告不要」は所得税のルールで、住民税には同じ仕組みがありません。たとえば鹿児島市は、給与所得以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税(市民税・県民税)は所得の多少にかかわらず申告が必要だと案内しています。広島市も、同じ場合に市民税・県民税の申告書の提出が必要だとしています。扱いや手続きは自治体の案内で確認してください。確定申告をした場合は、その内容が市区町村に伝わるので、別に住民税の申告をする必要は通常ありません。
会社員の場合、副業の分の住民税が給与からの天引き(特別徴収)に上乗せされることがあります。所得税の確定申告書(第二表)には、給与以外の所得にかかる住民税を自分で納める(普通徴収)かを選ぶ欄がありますが、自治体によって扱いが異なることもあるので、気になる人はお住まいの市区町村に確認してください。
必要経費にできるもの
国税庁によると、必要経費は収入を得るために直接必要な費用です。家事上の費用(私生活の費用)は経費にできませんが、仕事と私生活の両方に使うもの(家事関連費)は、仕事に必要な部分がはっきり区分できれば、その部分を経費にできます。
| 費用 | 考え方 |
|---|---|
| ガソリン代・充電にかかる費用 | 配達で使った分 |
| 車両の修理・整備費、タイヤ・チューブ | 配達に使う車両の分。私用と兼ねるなら使った割合で分ける |
| 自転車・バイクなどの購入費 | 金額が大きいものは、減価償却で数年に分けて経費にする |
| 配達バッグ、スマホホルダー、モバイルバッテリー、雨具 | 配達のために買ったもの |
| スマートフォンの通信費・本体代 | 私用と兼ねる場合は、仕事で使う割合を合理的に決めて分ける |
| 保険料(任意保険など) | 配達に使う車両の保険。私用と兼ねるなら割合で分ける |
| 駐輪場・駐車場代 | 配達のために払ったもの |
按分(割合で分けること)の比率は、走行距離や稼働時間など、あとから説明できる根拠で決めます。領収書やレシート、各社の報酬明細は保存しておきましょう。国税庁によると、事業所得がある人は記帳と帳簿書類の保存が必要で、帳簿は7年間、領収書などの書類は5年間が保存期間の基本です。業務に係る雑所得の人も、前々年の収入が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類の保存が必要です。経費の計算方法は国税庁 No.1350 事業所得の課税のしくみ、雑所得はNo.1500 雑所得で確認できます。
開業届と青色申告
配達を事業として続けるなら、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を出します。国税庁の案内では、提出期限は事業を開始した年分の確定申告期限までです。
青色申告をすると、帳簿のつけ方に応じて青色申告特別控除が受けられます。国税庁によると、正規の簿記(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表などを期限内の確定申告書に添付すれば55万円、さらにe-Taxでの申告か電子帳簿保存をすれば65万円、それ以外は10万円の控除です。青色申告特別控除は事業所得(または不動産所得)が対象で、雑所得には使えません。青色申告をするには「青色申告承認申請書」を、原則として青色申告をしたい年の3月15日まで、その年の1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内に提出します。詳しくは国税庁 No.2072 青色申告特別控除を参照してください。
インボイス制度
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は2023年10月1日に始まりました。インボイスを交付するには、事前に適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受ける必要があります。登録すると課税事業者になり、売上の規模が小さく本来は消費税の納税義務がない人(免税事業者)でも、消費税の申告・納付が必要になります。
配達員が登録するかどうかは、配達サービス側がインボイスを必要とするか、登録した場合の消費税の負担はどのくらいか、などで判断します。登録の要否や、登録・未登録で報酬の扱いが変わるかは、各社の案内を確認してください。
免税事業者から登録した個人事業者には、負担を軽くする特例があります。国税庁によると、売上の消費税額の2割を納付税額にできる「2割特例」は、個人事業者の場合、2026年(令和8年)分まで使えます。令和8年度の税制改正で、免税事業者から登録した個人事業者は、2027年分と2028年分について、売上の消費税額の3割を納付税額にできる「3割特例」が設けられました。要件などは国税庁のインボイス制度の概要から確認できます。
年間のスケジュール
- 配達を始めたら:報酬明細と経費の領収書を保存し、帳簿をつけ始める。事業として続けるなら開業届、青色申告にするなら承認申請書を出す
- 毎月:各社の報酬明細を確認して記録する。経費のレシートを整理する
- 1月:前年1年分の報酬と経費を集計する
- 2月16日〜3月15日:確定申告(e-Taxなら自宅から提出できる)
- 6月ごろ以降:住民税の通知が届く
まとめ
- 配達報酬は事業所得か業務に係る雑所得。どちらにあたるかは状況で変わるので、迷ったら税務署に相談する
- 会社員の副業なら、給与以外の所得(報酬−経費)が年20万円以下で所得税の確定申告は原則不要。住民税は別に申告が必要な場合がある
- 経費は配達のために使った分。私用と兼ねるものは根拠のある割合で分ける
- 開業届の提出期限は開業した年分の確定申告期限まで。青色申告なら最大65万円の控除(事業所得が対象)
- インボイス登録は任意。登録すると消費税の申告が必要。個人は2026年分まで2割特例、2027・2028年分は3割特例
税制や各社の報酬明細の出し方は変わることがあります。国税庁の最新情報と各社の公式サイト・アプリを確認し、判断に迷う点は税務署や税理士に相談してください。保険料の扱いは配達員の事故と保険、配達員の始め方の全体像はフードデリバリー配達員の始め方で紹介しています。
